「税理士なのに毎月関与先へ訪問しないのはおかしい」と言われたことがあります。
昔ながらの税理士事務所では、
・毎月お客様のところへ訪問する
・資料を預かる
・税理士事務所で入力する
・翌月に試算表を渡す
という流れが一般的でした。
もちろん、現在でも訪問が必要なケースはあります。
しかし、わたしは勤務時代から税理士業務に携わる中で、資料を大量に預かることや、訪問回数を増やすことだけでは、本当に良いサービスにはならないと感じる経験をしてきました。
現在、当事務所がオンライン対応やクラウド会計を取り入れている理由は、税理士の仕事を減らすためではありません。
お客様、税理士、それぞれが本当に必要な仕事へ時間を使うためです。
記帳代行の経験から、単純作業を減らす必要性を感じた
勤務時代、記帳代行業務を担当したことがあります。
その中で、半年分の資料として現金出納帳(Excelを印刷したもの)と通帳コピーを預かったことがありました。
半年分とはいえ、伝票枚数でいうと数千枚規模だったと記憶しています。
それを1週間ほどかけて入力しました。
当時は、とにかく資料を見て、1件ずつ会計ソフトへ入力していく作業でした。
しかし、今振り返ると、その作業の多くは現在なら大幅に効率化できます。
・Excelからの取り込み
・口座データの連携
・自動登録ルールを設定してまとめて処理
freeeに初めて触れて自動登録ルールを使ったとき、入力作業が大きく減ることに本当に驚きました。
「これがあれば、単純入力作業の時間を減らして、本来税理士が時間を使うべき仕事に集中できる」と感じたことを覚えています。
また、別の時には段ボールいっぱいに月次資料が届き、その入力を担当したこともあります。
しかし、資料の量が多ければ仕事が簡単になるわけではありません。
・何の取引かわからない
・必要な資料が足りない
・確認しても、資料を送った本人が内容を把握していない
ということもありました。
この経験から感じたのは、重要なのは資料の量ではなく、整理された情報共有だということです。
税理士の仕事は、資料を大量に入力することではありません。
税理士の本来の役割は、
・会計内容の確認
・税務上の問題がないか判断すること
・改善点を見つけること
といった専門的な判断です。
そのため、単純作業はできるだけシステム化し、税理士にしかできない判断業務へ時間を使うべきだと考えています。
オンライン対応は、訪問を減らすためではなく日常的な情報共有のため
昔ながらの税理士業務では、税理士との接点が「訪問日」に集中することがあります。
・毎月税理士が訪問する
・その日に資料を渡す
・その日に質問する
という形です。
自計化をしている場合でも、訪問日前に集中して入力することがあります。
しかし、この方法では、税理士が来る直前にまとめて経理対応をする状態になりやすい場合があります。
例えるなら、家庭教師が来る直前に1か月分の宿題をまとめて終わらせるような状態です。
それでも問題なく管理できる方もいます。
しかし、経理は本来、日々発生する取引を少しずつ整理していく方が効率的です。
今はスマホがあれば最短だとレシートもらったその場で撮影して会計処理ができる時代です。
そこまではいかなくても、日々少しずつ経理を進めるイメージです。
これは、お客様にも税理士にも負担が少ない方法だと考えています。
当事務所では、クラウド会計やオンラインでのやり取りを利用することで、
・レシートを撮影して登録する
・必要な資料をアップロードする
・freee上で確認事項を共有する
・メールで質問や回答を行う
といったことを日常的に行っています。
また、訪問の場合は、お客様も仕事の時間を調整する必要があります。
税理士側も移動時間を含めた時間を確保する必要があります。
過去に医療機関に勤務していた経験から、感染対策も考慮してオンラインを中心にしています。
その時間を使って2時間まとめて確認するよりも、必要なタイミングで資料共有やメール確認を行う方が、お互いに負担にならない場合があります。
もちろん、重要事項の確認などについては、必要に応じてオンライン面談を行っていますし、場合によっては対面での面談を行うこともあります。
ただし、毎回の打ち合わせは対面でなければ説明できない時代ではなくなっています。
誰かが犠牲になることで成り立つ経理にはしたくない
「お客様ができないなら、税理士が丸投げを抱え込めばいい」と言われたことがあります。
しかし、これは税理士がすべてを背負えば解決する問題ではありません。
丸投げそのものの問題点は下記にもかいています。

税理士本人が大量の入力作業を抱える。
または、スタッフを雇用して、その作業を担当してもらう。
それでは、負担が別の誰かへ移るだけです。
私は勤務時代に、スタッフ側として大量の単純作業を経験しました。
もちろん、入力作業そのものが必要な場面はあります。
しかし、税務や会計の専門知識を使う時間よりも、毎月繰り返される単純入力や資料整理に多くの時間を使ってしまうことがあります。
その経験から、独立後は誰かが無理をすることで成立するしくみにはしたくないと考えています。
そのため、当事務所ではお客様にもシステムの導入と一定の経理作業をお願いしています。
これは税理士が仕事を減らして楽をしたいからではありません。
お客様自身が日々の数字を把握し、必要な情報を整理することで、税理士もより正確な確認や改善提案ができるからです。
もちろん、最初から完璧にできる必要はありません。
実際に、開業を機に初めてパソコンを購入した方でも、必要な操作を一つずつ確認しながら通常の月次運用まで進められたケースがあります。
重要なのは、最初から詳しい知識があることではありません。
・わからないことを確認すること
・必要な作業を少しずつ覚えること
・経理を継続して行うこと
こうした取り組みができるかどうかです。
当事務所では、お客様ごとに負担を減らせる方法を考えています。
・freeeの設定や入力方法の改善
・自動化できる部分を増やす
など、できるだけ無理なく続けられる方法を探しています。
ただし、どれだけ日常的に経理可能なしくみを整えても、お客様自身が情報共有や改善に取り組む意思がなければ、税理士だけで経理を整えることはできません。
実際に、税理士側が時間をかけて説明や環境構築などのサポートを行っても、それを守る気がない方に対しては、継続的な改善は難しいと感じる経験もありました。
税理士とお客様の双方が役割を持つことで、継続できる経理になります。
おわりに
当事務所がオンライン対応やクラウド会計を取り入れている理由は、単に税理士の仕事を減らすためではありません。
勤務時代に大量の入力作業を経験し、独立後にお客様との情報共有について考える中で、誰かが無理をすることで成立するしくみではなく、継続できるしくみを作りたいと考えたからです。
昔ながらの税理士業務と、クラウド会計を前提とした税理士業務は、仕事の進め方が大きく異なります。
どちらが良い、どちらが悪いという話ではありません。
ただ、社会全体がデータ化・オンライン化へ進む中で、税理士業務も変化しています。
税理士の仕事を、昔ながらの税理士業務の判断基準で、訪問回数や資料を預かる量、入力作業といった目に見える「作業」だけで評価すると、本来の専門性は見えなくなってしまいます。
システムでできることはシステムへ。
お客様が行うべきことはお客様へ。
税理士が判断すべきことは税理士へ。
役割分担することで、無理なく適切な経理を続けられる環境を作ることが、当事務所の考えるオンライン対応の目的です。
