個人事業主の方から、「自宅の家賃は経費にできますか?」という質問を受けることがあります。
在宅で仕事をしている方の場合、自宅に関する費用を事業の経費として計上することがあります。
一方で、自宅は生活する場所でもあります。
そのため、自宅家賃を経費にする場合は、まず本当に事業のために使用しているのか、その使用状況を確認する必要があります。
今回は、自宅家賃の家事按分で気を付けたいことについてかいています。
自宅以外に店舗や事務所がある場合は注意
個人事業主になると、「仕事を始めたから、自宅の家賃も経費にできる」と考えてしまう方がいます。
しかし、開業したことによって、今まで生活費だった家賃が、ある日突然事業経費になるわけではありません。
特に、衣食住に関する支出は生活費との区分が難しい項目です。
そのため、自宅家賃を経費にする場合は、
・どのように事業で使用しているのか
・どの程度使用しているのか
・その割合を合理的に説明できるのか
を確認する必要があります。
特に注意が必要なのが、自宅以外に店舗や事務所がある場合や、訪問型・現場型の仕事をしている場合です。
例えば、
・店舗で施術や販売をしている
・事務所を別に借りている
・顧客先へ訪問して仕事をしている
・現場へ行って作業する仕事である
という場合です。
そういった方からも
「週に1回、自宅で事務作業をするので家賃を経費にしたい」
という相談を受けることがあります。
確かに、在宅仕事ではなくても、仕事に関するメール確認や資料整理などを自宅で行うことはあるでしょう。
しかし、だからといってそれで家賃を経費計上する必要性があるか、自宅が本当に事業拠点として使用されているのかは確認が必要です。
週1回の事務作業が、本当に丸1日かかるものでしょうか。
現在では、freeeなどのクラウド会計や各種オンラインツールを利用することで、記帳や請求処理などの事務作業は短時間で完了できることが多いです。
そのため、少しの事務作業を行っていることだけで、自宅家賃を大きく経費にすることが合理的なのかは慎重に考える必要があります。
例えば、訪問型の仕事で、自宅での作業が月に数回程度であれば、無理に自宅家賃を按分するよりも、必要なときだけレンタルオフィスやコワーキングスペースを利用する方法もあります。
その場合、作業内容を記録しておけば、あとは領収証で利用日時や金額などの情報が残るため、自宅を無理に経費にするよりも事業経費を説明しやすくなります。
経費にできる金額を増やすことだけではなく、事業実態に合った管理方法を選ぶことも大切です。
自宅を事業用スペースとして使用している場合
一方で、自宅を実際に事業用スペースとして使用している場合には、自宅家賃を家事按分することがあります。
例えば、
・自宅の一室を仕事専用の部屋として使用している
・商品や資材を保管するための場所として使用している
・事業用の備品を継続的に保管している
などです。
ただし、「仕事に関係する物がある」というだけで、その場所全体を事業用として考えられるわけではありません。
商品や資材を保管するための倉庫として使用している場合、
・棚を設置している
・事業用の商品や備品を整理して保管している
・継続的にそのスペースを使用している
など、事業用倉庫としての実態が説明できるのであれば、その使用状況に応じて事業利用部分を考えることになります。
倉庫の場合、土日や営業時間外であっても、そのスペースは事業のために占有されています。
一方で、棚や収納道具を使わずに床一面に仕事道具を並べて、
「仕事道具あるからその部屋を事業用スペースとして按分したい」
と言われたことがありますが、これがおかしいのは一般的にもわかるかと思います。
床面積は単にモノを並べればいいというわけではなく、事業のために合理的に使用・管理されていることが必要です。
普段は生活スペースとして使用している部屋に、仕事道具を置いているだけであれば、その場所全体を事業用として考えることが適切なのか確認が必要です。
「その場所を事業のためにどのように使用しているか」
「その使用状況が一般的にみておかしくないか」
も考える必要があります。
按分方法ざっくりと
自宅を事業で使用している場合、家賃のすべてを経費にするのではなく、事業で使用している部分を家事按分します。
基本的な考え方は、
「事業で使用している部分 ÷ 全体」
です。
自宅家賃の場合、一般的には、
・自宅全体の面積
・仕事で使用している部屋の面積
などを基準に割合を計算します。
例えば、自宅全体が60㎡で、そのうち10㎡を仕事専用の部屋として使用している場合、
10㎡ ÷ 60㎡ = 約16%
というように計算できます。
ただし、面積だけで機械的に決めればよいわけではありません。
同じ10㎡でも、
・仕事専用の部屋として毎日使用している
・普段は生活スペースで、たまに作業するだけ
では、事業利用の実態は異なります。
例えば、自宅のうち30%を仕事部屋として使用している場合を考えます。
在宅で仕事をしており、その部屋を毎日の仕事場として継続的に使用しているのであれば、面積を基準に按分することには合理性があります。
一方で、訪問型の仕事で、週に1回だけその部屋で事務作業をする場合はどうでしょうか。
同じ「30%の仕事部屋」であっても、実際の使用状況は大きく異なります。
在宅で毎日使用している人と、週に1回しか使用していない人が、同じ割合で自宅家賃を経費にすることが本当に合理的といえるでしょうか。
仕事部屋の面積が30%で、週7日のうち1日だけ使用するのであれば、
30% × 1/7 = 約4%
という考え方もできます。
もちろん、家事按分は単純に面積と日数を掛ければよいというものではありません。
使用時間、使用頻度、利用目的など、その支出に合った合理的な基準を選ぶ必要があります。
また、家事按分では「何%にするか」よりも、「なぜその割合なのか」を説明できることが重要です。
ネットで見た割合や、他の人が採用している割合をそのまま使うのではなく、自分の利用状況に合わせて判断する必要があります。
家事按分の割合の基本的な考え方については、こちらの記事で紹介しています。

おわりに
今回は、自宅家賃の家事按分で気を付けたいことについてかきました。
自宅で仕事をしている個人事業主の場合、自宅に関する費用を経費として扱うことがあります。
しかし、「個人事業主だから」「仕事道具があるから」という理由だけで、自宅家賃を経費にできるわけではありません。
まずは、本当に自宅を事業のために使用しているのかを確認することが大切です。
そのうえで、面積や使用頻度など、実際の利用状況に合った基準で割合を決め、その理由を説明できる状態にしておきましょう。
家事按分では、経費にできる金額を増やすことよりも、実態に合った処理を行い、第三者に説明できることが重要です。

