「税理士なら毎月お客さんのところへ訪問するもの」
「車を持っていない税理士はおかしい」
以前、そんなことを言われたことがあります。
確かに、昔ながらの税理士事務所では、毎月お客様のところへ行き、資料を預かって事務所へ持ち帰り、記帳や試算表の作成をする、という仕事の進め方が一般的でした。
私自身、勤務していた職場で、段ボールいっぱいの資料を預かって処理するような仕事を経験しています。
そのため、こうした仕事の進め方がどういうものなのかは分かっています。
だからこそ、現在の私は、訪問・紙・電話を中心とした仕事の進め方ではなく、オンラインを中心にしています。
単に「そのほうが楽だから」という話ではありません。
実際に仕事をしてきた中で、こちらのほうが税理士とお客様の双方にとって、現在の環境に合っていると考えているからです。
わからないまま資料の丸投げができない時代
以前の勤務先では、お客様から大量の資料を預かることがありました。
段ボールいっぱいの資料を受け取って、「これだけ資料があれば経理ができる」と思うかというと、実際にはそうでもありません。
必要な資料が足りないこともあります。
反対に、経理には使わない資料が大量に入っていることもあります。
そもそも、その資料が何のためのものなのか、どの取引に対応しているのかが分からないこともあります。
お客様自身も、何を税理士に渡せばいいのか分からないまま、とりあえず手元にあるものを全部渡していることがあります。
たいていはその資料の丸投げすらまともに期限が守られず、さらに資料やお金の出入り等を聞いても答えられず、しまいには実際に資料が不十分なのに「資料は全部渡しているんだから」と怒り出すケースもありました。
つまり、資料の量が多いことと、経理が適切に管理できていることは別の話です。
現在は、銀行やクレジットカードの明細をオンラインで確認したり、領収書をスマートフォンで撮影して保存したり、請求書をPDFで受け取ったりすることが増えています。
freeeのようなクラウド会計を使えば、銀行やクレジットカードの明細を連携し、日々の取引をその場で確認することもできます。
こうした環境では、1年分の資料をまとめて税理士に渡すよりも、必要な情報をその都度共有していくほうが、状況を確認しやすくなります。
今は、銀行の紙通帳は発行しないのが基本、従来は紙で送られてきた電気・電話の料金なども紙の領収証からネットでダウンロードするようになっています。
これらの銀行や各種サービスの明細を、税理士が勝手に取得できるとは限りません。
ログインには本人確認が必要ですし、各種サービスの契約者本人でなければ問い合わせにも答えてもらえません。
税理士だからといって、お客様の代わりに何でも取得したり問い合わせたりできるわけではありません。
そのため、わからないままでは資料の収集すらできず、お客様自身でお金の出入りや資料の管理、サービスや取引について把握しないといけない時代になっています。
オンライン完結の理由
当事務所では、日常のやり取りをメールやfreeeで行い、面談はGoogle Meetを中心としています。
毎月訪問して資料を預かるという仕事の進め方には、税理士側だけでなく、お客様側にも負担があります。
お客様は仕事中であれば、その時間を空けなければなりません。
確定申告時期は冬のため、お客様も税理士も感染症リスクがあります。
資料を用意し、税理士を迎える時間を作る必要もあります。
税理士側も移動時間がかかります。
その時間を使って、freeeの内容を確認したり、資料を見たり、税務について調べたりすることもできます。
日々の経理や税務について「この取引はどう処理するのか」「この資料は必要なのか」といった確認であれば、freeeのコメントやメールでやり取りできます。
まとまった相談が必要であれば、Google Meetで画面を共有しながら話すこともできます。
そのため、当事務所では、訪問そのものをサービスの中心にはしていません。
紙についても同じです。
紙の資料が必要になる場面はありますが、すべてを紙でやり取りする必要はありません。
紙の資料を郵送すれば、紛失や郵送事故の可能性もありますし、受け取った側も保管場所が必要になります。
PDFなどで共有できるものはオンラインで共有したほうが、必要なときにすぐ確認できます。
契約についても、当事務所では電子契約を利用しています。
紙の契約書なら、印刷して、製本して、印紙を貼って、押印して、郵送して、返送されたものを保管する、という作業が必要になります。
電子契約なら、オンライン上で手続きを完了できます。
これも「若い人向けだから」という話ではありません。
紙でやり取りする必要がないものを紙に戻さない、というだけです。
電話についても、当事務所では日常的な連絡手段にはしていません。
電話はその場で話せる反面、後から「いつ、何を話したか」を確認しにくいことがあります。
メールやfreeeであれば、やり取りを後から見返すことができますし、Google Meetであれば画面を見せながらやりとりもできます。
税務や経理の話では、数字や条件を確認しながら話すことも多いため、記録が残ることには意味があります。
当事務所では、日常的な連絡をオンラインで行い、必要な打ち合わせはオンライン面談で行う、という形を基本にしています。
おわりに
私が訪問・紙・電話中心の仕事をしていた経験があるからこそ、現在の仕事との違いも分かります。
昔は税理士が資料を預かり、事務所に持ち帰って入力し、試算表を作り、紙に印刷してお客様に渡すことが仕事として目に見えていました。
最近、国税庁がシステムを更改し、税務当局とのやり取りもオンラインになるケースが出てくる可能性があります。
税金の納付や還付もオンラインでできますし、確定申告書などの用紙は配布しないようになりました。
つまり、訪問・紙・電話中心というのは維持することが難しくなっています。
当事務所では、昔のやり方をそのままオンラインに置き換えるのではなく、現在の環境に合わせて、お客様と税理士がそれぞれ確認すること、税理士が判断することを分けています。
「税理士だから毎月訪問する」
「税理士だから紙で資料を預かる」
「税理士だから電話で連絡する」
という形にこだわるのではなく、税務や経理に必要な仕事を、必要な方法で行う。
それが、現在の当事務所の仕事の進め方です。
