「ふるさと納税をいくらまでやれば一番税金が得できるか?」というご相談をよく受けます。
制度上、上限額をうまく使うことで自己負担を抑えられる仕組みであるため、「できるだけ損をしないようにしたい」という気持ちはわかります。
個人的には、ふるさと納税を使って「最も得になるライン」をギリギリまで追いかける節税は、あまりお勧めしていません。
所得税の改正が激しい
2020年代に入ってから、所得税関連の制度は毎年のように改正されています。
例えば基礎控除については、2019年までは一律38万円でした。
2020年以降は所得の大きさに応じて控除額が変わる方式になりました。
その後も控除額の見直しが続き、2020年から2024年は最大48万円、2025年は最大95万円、2026年は最大104万円と、短期間で何度も変更されています。
さらに2026年分については、2025年に一度決定された内容が2026年にに見直されるという動きもありました。
また、給与所得控除についても2026年に最低65万円から74万円へ引き上げられるなど、従来は比較的安定していた控除額が、近年は頻繁に変動しています。
扶養親族の所得要件や公的年金等控除なども同様に見直しが続いています。
加えて、所得税だけでなく社会保険料や年金負担も毎年のように変動しており、「去年と収入が同じだから今年も同じ条件で試算できる」とは言いづらい状況になっています。
ふるさと納税の上限額は、所得税と住民税の計算を前提に決まるため、これらの制度変更の影響を強く受けます。
住民税の「寄附金税額控除」については変更ありませんが、基本控除と特例控除の2つの控除があり、さらに特例控除の計算は所得や扶養状況によって変わるため、構造自体がもともと複雑です。
(住民税は税理士やe-taxではなく、市町村で計算します)
こうした細かな変化をすべて考えて1円単位でシミュレーションするとなると、税理士であってもかなりの時間とコストをかけて検討する必要がありますし、その結果自体も確実とは言いづらい状態です。
ふるさと納税のポータルサイトでは、住民税の複雑な仕組みも正確に計算できるページがありますが、そもそも前提となる金額が変動しているため、細かい計算で使うことには限界があります。
ちなみに、現行制度では合計所得金額2,350万円以下、給与収入のみの場合でおおよそ2,500万円以下の人は控除額が増えているため、多くの方は何もしなくても制度改正の恩恵で税負担自体は下がっています。
そのため、近年のように制度改正が頻繁に行われる状況では、「ギリギリの最適額を狙う」という考え方そのものの実用性は以前よりも下がっているといえます。
節税目的のふるさと納税は一時的にはお得だが…
例えば、課税所得(所得控除後、税率を掛ける前の所得)が700万円程度の方(給与収入でいうと約1,000万円)を想定します。
この場合、所得税率は20%となるため、ふるさと納税を20万円行うと、所得税は約4万円軽減されます。
残りは住民税から控除されるため、住民税も約16万円軽減され、合計で約20万円分の税負担が軽減される形になります。
一見すると「20万円のふるさと納税で、ほぼ同額の税金が軽減される」となり、非常にお得に見えます。
実際には、20万円は一度支出しているため、現金がそのまま増えるわけではありません。
翌年支払う税金を減らして調整する仕組みであり、実質的には自己負担2,000円で返礼品を受け取る制度です。
このため、ふるさと納税は「税金が戻ってくる制度」というよりも、「本来支払う税金の一部を寄付という形で前払いし、その見返りとして返礼品と税額控除を受ける制度」です。
ふるさと納税は、目先の税負担を軽くできる制度ですが、お金そのものが増える仕組みではありません。
個人的には、税金の優遇を受けながらお金を増やす運用を行うほうがいいのではないかと思います。
NISAは、運用で得た利益が非課税になるため、長期的な資産形成を通じてお金を増やしやすい制度です。
iDeCoは、掛金がふるさと納税と同様に所得控除の対象となるうえ、老後資金の形成にもつながるため、長期的に資産を増やしやすい制度です。
例えば、20万円の元手だけで年利4%の運用をした場合、複利で増える利益がふるさと納税による実質的なメリット(約20万円)を上回るまでには、18年程度かかる計算になります。
18年というと一見長く感じるかもしれませんが、その後も運用を続けることでお金が増えていく可能性があります。
短期的にはふるさと納税の方が「得をしたように見える」一方で、長期的にはNISAやiDeCoで運用する方が得できる可能性があります。
また、緊急で資金が必要な場合でも、NISAであれば元手20万円を引き出すことができますが、ふるさと納税はその性質上、20万円を引き出すことはできません(iDeCoも原則60歳までは引き出せません)。
おわりに
ふるさと納税自体は節税の効果もある制度ですが、年齢やライフプランによっては、ギリギリの節税最適化を追いかける必要性はそれほど高くないと考えています。
むしろ、iDeCoやNISAなどの税制優遇制度を活用しながら、長期的に資産形成を進めていく方が、結果として合理的になるケースが多いのではないかと思います。
ふるさと納税については、地域貢献しつつ返礼品を楽しむ程度で行うのがちょうどいいのではないでしょうか。
