予防接種とインボイス制度

税金

一般的な個人病院の収入のほとんどは、保険証を使った保険診療収入です。
個人病院のなかには、診療科を問わず、冬だけインフルエンザの予防接種を行う場合があります。

インフルエンザの予防接種は、保険診療ではないため、消費税がかかります。

病院で予防接種を受けるのは、ほとんどが一般個人のため、これまでは消費税が問題になりませんでした。

しかし、インボイス制度が開始されたことで、会社が従業員の福利厚生で予防接種を受けさせた場合には、消費税に関連してインボイスの扱いが問題となります。

今回は、予防接種とインボイスについて、会社側と病院側の視点で書いています。

会社側の視点

会社が消費税の免税事業者である場合は、消費税の納税義務がありません。

また、インボイス登録をした会社が、消費税の計算方法を簡易課税・2割特例で行っている場合、自分の会社の売り上げだけで支払う消費税を計算します。
職員の健康診断や予防接種の費用は、消費税額の計算に関係ありません。

免税事業者や簡易課税や2割特例の場合、予防接種を受けた病院がインボイス登録をしているかどうかは関係なく、特に問題にならないかと思います。

インボイス登録をした会社が、消費税の計算方法が原則課税の場合は、予防接種を受けた病院がインボイス登録をしているかどうかで対応が変わります。

原則課税の場合は、実際に受け取った消費税と支払った消費税をもとに国に支払う消費税額を計算するためです。
また、支払った消費税だと認めてもらうためには、インボイスを保存する必要があります。

インボイス登録をしている病院が発行したものだけが、支払った消費税を経費にすることを認めてもらえます。
登録をしていない病院はインボイスを発行することができないため、支払った消費税を経費にすることが認めてもらえません。

そのため、予防接種を受けた病院がインボイス制度に登録しているかどうかを、あらかじめホームページや予約時に確認する必要があります。

会社が予防接種を受ける病院と時期を指定し、支払いは予防接種を受ける職員分をまとめて支払うことができるのが理想です。

こうすることで、会社と病院で代金とインボイスを直接やりとりできる、事務処理は1回で済む、というメリットがあります。

会社によっては、職員の勤務先が異なるなどでまとめることができず、各自で予防接種を受けて後日経費精算というケースもあるかと思います。

職員から経費精算で領収書を提出してもらった際、会社宛の領収証ではない、病院がインボイス登録をしていない、など消費税に関する処理や確認が大変になります。

免税事業者への支払いも2029年までは部分的に消費税を経費にできる、従業員個人宛のインボイスであっても、職員名簿と立替金精算書をセットで保存してインボイスの要件を満たす、など事後的な対応は、できないことではありません。

しかし、会社の管理上、職員1人1人に毎年このような対応をしていては非常に手間になりますし、経理や総務にとっては、職員にお願いしてもきちんと対応してくれないことがストレスになります。

インボイス制度を機会に、インボイス登録をしている病院を指定し、その病院でまとめて予防接種を職員に受けてもらい、代金は後日振り込みをする、など会社と病院で直接やりとりできる方向に変えるのが良いかと思います。

病院側の視点

予防接種を受ける方のほとんどは個人です。
そのため、通常は消費税やインボイスとは関係ありません。

しかし、予防接種を多く受け入れている場合、会社から職員の予防接種の依頼を受けるケースもあります。
その場合、病院がインボイス登録しているかどうか、会社から問い合わせを受けることがあります。

通常の保険診療のみ、冬だけインフルエンザの予防接種を実施という程度ではインボイス登録をしないケースもあるかと思います。

その場合は、3,300円のような消費税10%込みを連想させる価格は避ける、インボイス登録していないと答えるなどの対応が必要です。

一方で、インボイスの登録をした場合は、ホームページに登録番号を載せておく、聞かれたら答える、といった対応に加えて、会社宛ての請求書や領収書には、登録番号の記載を忘れないようにします。
通常の医事会計システムで発行される領収書は、会社宛てのものは発行されないため、別個にエクセルなどで請求書などを発行していると思います。
あらかじめ、請求書のひな型に登録番号の記載をするようにします。

インボイスとは関係のない内部管理の注意点です。
予防接種を会社員が受けに来るのは1日ではなく、1週間など期間があることが多いです。そして、請求は会社へ請求書を送付して後日振り込んでもらうことになります。
冬は風邪で外来の患者さんが増えることもあって、予約や予約のキャンセル・未収や後日振り込みなどの管理が大変になります。
医事課内部で情報共有を行い、請求漏れや二重請求のないように注意することも必要です。

おわりに

ここまで、予防接種とインボイスについて、会社と病院のそれぞれの視点で書きました。
わたしは、会社側と病院側のどちらも業務経験があるため、インボイス登録の有無で対応が変わる最たる例だと思っています。
特に今年はインボイス開始直後で混乱もあると思います。
今回の記事が、会社も病院も事務負担を軽くできる参考になればと思います。

タイトルとURLをコピーしました