日本国内の上場会社が発行している株式(上場株式)を持っていると、配当金を受け取ることができます。
この配当金は、あらかじめ源泉所得税が天引きされた金額を受け取ります。
受け取った配当金は、受取時の天引きだけで確定申告をしないこともできますし、確定申告で精算することもできます。
今回は、配当金を受け取った場合の確定申告について書いています。
申告方法は3通り
1.申告しない
冒頭で書いた通り、配当金は受け取る時点ですでに税金が天引きされているため、申告しないことができます。
申告しないことのメリットとしては、扶養控除や配偶者控除などの申告の際に合計所得金額に配当金を含めないことができます。
つまり、配当金を含めると合計所得金額が高くなって扶養控除などから外れてしまう場合でも、配当金を申告しないことで合計所得金額を低くして扶養控除を受けることができます。
ただし、上場株式の譲渡損があるなど、申告をしないことが不利になる場合もあるため検討が必要です。
2.総合課税の配当所得として申告する
総合課税とは、不動産賃貸や事業、給与などの所得の合計を合わせて税金計算することをいいます。
上場株式の配当金もこれらと同じく総合課税として計算することができます。
総合課税の計算は、所得金額の合計が高いほど、最高45%まで税率が上がるしくみです。
そのため、総合課税の場合は、単純に配当金を足すだけだと税率が上がるのではないかと思うかもしれません。
不動産賃貸や事業で損失になった場合は、その金額を配当所得から控除することができるため、結果的に源泉徴収される20%より低い税率になる可能性もあります。
また、損失がなくても、医療費控除や扶養控除など所得控除を使えば、源泉徴収される20%より低い税率になる可能性もあります。
さらに、総合課税の配当所得とした場合は、その配当金の源泉徴収前の金額の10%または5%の金額を、支払う税金の額から控除することができます。
ただし、総合課税の配当所得として申告する場合は、上場株式の譲渡損失の金額を控除することができません。
3.申告分離の配当所得として申告する
申告分離課税とは、総合課税とは分けて税金計算を行うことをいいます。
上場株式等の配当所得を申告分離で計算した場合の税率は20%です。
源泉徴収された場合の税率も20%で同じため、手間だけかかって無意味に見えるかもしれません。
また、総合課税と違って配当控除を受けることができません。
配当所得を申告分離で申告するメリットとしては、総合課税と違って上場株式の譲渡損がある場合はその損失の金額をその配当所得から控除することができます。
申告の際の注意点
申告方法は、申告しない・総合課税で申告する・申告分離の配当所得として申告する、の3つあることを書きました。
申告するかしないか、の選択は、1回に支払われる配当ごとに決めることができます。
しかし、申告することとした場合、総合課税・申告分離課税のどちらを選ぶか、については、すべてで統一して決める必要があります。
この会社は総合課税だけど、あの会社は申告分離課税にする、という選択はできません。
また、申告方法の選択は、税金計算誤りと違って、確定申告をした後でやりなおすことは認められていません。
上場株式の譲渡損失は、申告した年の翌年以降も繰り越せるため、過去にその損失がある場合などは、上場株式の配当所得の計算方法は慎重に検討する必要があります。
単純に今年の確定申告での税金だけ有利不利を比べるだけなら、国税庁の確定申告書作成コーナーや所得税の申告ソフトで3通りすべて計算して試すことができます。
上場株式の配当所得がある方については、実際に3通り計算して検討したことがありました。