病院の保険診療の請求と入金の処理

税金

病院のメインの収入は、保険診療分の請求による収入です。

病院の保険による診療行為は、全国一律で点数が決まっています。
その点数をもとに診療報酬を算定し、患者さんの自己負担部分を除いた金額を保険者に請求することで、保険者(社保・国保)の審査で問題がなかったものが病院に入金されます。

たとえば、社保に加入している会社員の患者さんの治療費の総額が1,000円だったとします。
患者さんの自己負担は3割のため、300円は患者さんが窓口で病院に支払います。
残りの7割(700円)は、病院が社保(社会保険診療報酬支払基金)に請求します。
そして、請求内容を社保で審査され、問題がなければ、病院に700円が入金されます。

請求から入金の流れは次のようになります。

今回は、保険診療の社保・国保への請求と入金の処理について書いています。

請求の処理

保険診療については、毎月分を翌月10日までにレセプトを社保・国保に提出して請求します。

正確には、社保の場合は「社会保険診療報酬支払基金」、国保の場合は「国民健康保険団体連合会」というところに、診療報酬請求書とレセプトを提出をします。

レセプトとは、診療報酬明細書と言って、患者さんごとに1か月分の診療内容が書かれたものです。

医療事務は、月初に先月分のレセプトに不備がないかをチェックし、不備があれば修正をしています。
そして、修正されたものを10日までに提出します。
(今はコンピュータでチェックし、ネットで送信提出することが多いです)

その経理処理は、請求月の月末の日付で行います。

10月分の場合、チェックや提出が11月であっても、その請求のもととなった診療行為は10月のため、10月31日で経理をします。

10月31日
(借方) 医療未収金 3,000,000円   (貸方) 外来診療収益 3,000,000円

入院の場合は「入院診療収益」にする、社保と国保が区別できる名前にする、などの違いはありますが、基本は上記のようになります。

なお、交通事故の患者さんで自賠責保険を使うかどうかの確認待ちの場合など、レセプトの提出を保留している患者さんがいる場合があります。
請求状況が確定するまでは、経理も保留にすることもあります。
保留にしている患者さんについては、きちんと把握しておくことが重要です。

レセプト請求の流れは、税金でいうと源泉所得税の納付や所得税確定申告に近い感じです。
レセプト請求の特徴としては、「10日の締め切り」が土日であってもかわらないという点です。
税金関係の場合は、提出期限が土日のときは翌月曜日が期限になる、など後回しになるのですが、そうならない点は注意が必要です。

入金の処理

請求したレセプトは、社保や国保で審査を受け、問題がないものは、請求通りの入金があります。
請求していても、記載内容に不備がある場合はレセプトが戻されるもの(返戻)、審査によって不要な診療として減額されるもの(査定減)、などがあります。

そのため、必ずしも請求通りの入金がされるとは限りません。

返戻については、通常は不備を直して再度請求することになります。
そのため、経理では返戻を受けたときに一度、その請求と未収を取り消します。不備を直して再請求する時に改めて計上します。

たとえば、10月10日に提出した9月分の外来診療分のうち、11月4日に20,000円分の返戻があった場合は次のようになります。

11月4日
(借方) 外来医療収益 20,000円  (貸方) 医療未収金 20,000円

査定減については、不要な診療として本来の請求額から減額されます。
査定減の通知を受けたときには、減額分を「保険等査定減」で処理します。

たとえば、10月10日に提出した9月分の外来診療分のうち、11月4日に10,000円分の返戻があった場合は次のようになります。

11月4日
(借方) 保険等査定減 10,000円  (貸方) 医療未収金 10,000円

入金については、基本的には上記の返戻・査定減がなかった金額がそのまま入金されるはずですが、実際には一致しないことが多いです。

なぜなら、前月分だけでなく、過去の数か月分をまとめて返戻される場合があるなど、必ずしも毎月の請求金額と整合しない状況があるためです。
交通事故の患者さんの場合、自賠責保険での治療に変更となったため、社保への請求を取り下げたことがあります。

入金額は、その金額で未収金を解消する処理をします。
原因の不明な差額については、収入と未収を取り消す処理をします。

たとえば、9月分の外来診療の請求額2,000,000円に対して、11月20日に1,900,000円の振込入金があり、差額100,000円の原因が不明の場合は、次のようになります。

11月20日
(借方)  普通預金  1,900,000円  (貸方) 医療未収金 1,900,000円
(借方) 外来診療収益  100,000円  (貸方) 医療未収金  100,000円

なお、返戻や査定減を受けたときには処理をせず、入金時に請求との差額をすべて保険査定減や診療収益の減少で処理しているところもありました。

会計処理の方法にかかわらず、請求額と入金額の差額の原因となる返戻や査定減については、きちんと原因分析をしておくことが重要です。

まとめ

ここまで、病院の保険診療の請求と入金の処理について書きました。
請求と入金が一致しないなど、会計処理すべき金額や時期が複雑なため、できるところから少しずつ管理するといいでしょう。

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