会計では、一時的なお金のやり取りや内容が不明のものについて、支払いであれば仮払金・受け取りであれば仮受金を使うことがあります。
現金や預金の出入りがあるため、それにあわせるためとりあえず仮で記録するためのものなのですが、気が付くと仮払金や仮受金の内容がわからないまま何年も経っている…ということもあります。
今回は、仮払金や仮受金を使うときの注意点について書いています。
仮払金・仮受金の本来の使い方
仮払金は、一時的なお金のやり取りや内容が不明のものについて仮で使う科目です。
たとえば、出張のための交通費を多めに渡して、後で精算する場合に使います。
職員に出張のための交通費として2万円を渡した場合は、次のようになります。
この時点では、交通費の金額が確定していないため、とりあえず仮払金で処理します。
後日、その職員から実際に使った交通費は12,000円の経費精算書類の提出と8,000円の返還があった場合は次のようになります。
一時的に仮払金としていたもののうち、実際に使った分を旅費交通費に変更し、使わなかった分を現金に戻して、仮払金を精算しています。
また、内容が不明な取引があった場合は、次のようになります。
たとえば、銀行口座に内容が不明の30,000円の入金があった場合は次のようになります。
後日、内容を確認したところ、新しい取引先からの前受金だと判明したときは、仮受金から前受金に変更します。
このように、経理しないと現金や預金の金額が合わないけれども、内容がわからないというときに、支出は仮払金・収入は仮受金で仮の処理をします。
多用するデメリット
仮払金・仮受金は内容がわからないものでも記録できるため、現金や預金などの金額を合わせるためには便利な科目です。
しかし、これを多用するデメリットがあります。
それは、何でも仮払金や仮受金で処理することで、内容が解決されないままその金額が年々増えていくことです。
上記の例のように、早期に精算がされる・内容が判明する取引ばかりであればいいのですが、現実には、いちど内容不明とした取引が後日解決することは難しい気がします。
毎月の経理の期限が早すぎる場合、その期限に間に合わせることに追われて、過去の原因究明を行う時間がないということがあります。
また、科目や内容を確認するための資料が出てこない、相手が出してくれない・答えてくれないということもあります。
とりあえず仮払金や仮受金で処理して後からちゃんとした科目に直そう…と思って未解決の取引がしだいに増えていってしまいます。
そして、気づいたら何年も前の取引が残ったままで、当時のことを知っている人も資料も何もない…ということが起こってしまいます。
早期解決と発生させないしくみが必要
仮払金・仮受金は、本来は内容がわかるまでの一時的な仮の科目の置き場です。
物置に物を置きすぎたら整理が必要なのはわかると思いますし、物置に何でも放り込んでゴミ箱のように使ってはいけないこともわかると思います。
仮払金・仮受金は、気が付いたらゴミ箱のように使われて内容不明の取引が溜まっていくということもあります。
そのため、使用にあたっては本来の一時的な科目ということは注意して使います。
そして、どうしてもわからない取引については、早期に内容の解決に努めます。
遅くとも決算までにはその内容を解決させ、仮払金や仮受金に残さないようにします。
しかし、仮払金や借受金が解決できないのは、経理だけの問題ではなく、経理に解決のための資料や情報が届かないという経理以前の問題も大きいです。
まずは、きちんと経理に情報が届くという体制を職場でつくることが必要です。
不明な入金であれば、営業と経理で情報共有して不明な入金早期解決する、ということができます。
あわせて、仮払・仮受が発生しないようなしくみを作ることも重要になります。
職場共用の交通系ICカードやクレジットカードを持つ、後日振り込み可能な宿泊先を指定して出張してもらう、など職員との仮払金精算をつくらないことができます。
このように、仮払金や仮受金は本来の一時的な使用にとどめるという経理上の注意点と、仮払・仮受を発生させないしくみを作る体制上の注意点の双方が重要になります。