病院では、社会保険と国民健康保険へのレセプト請求以外にも、様々な売上があります。
その売上に対する請求については、きちんと管理することが重要です。
病院のレジで支払われるものについては、次の2つで売上や入金状況の管理はできます。
- レジと連動した医療事務のコンピュータのデータ
- 毎日のレジ締めの処理や領収証の控えの紙
しかし、レジで支払われないレセプト以外の売上については、上記の方法で管理することができません。
レジで支払われないレセプト以外の売上とは、例えば次のものです。
- 後日会社にまとめて請求する会社員の健康診断料金
- 保険会社へ請求する、交通事故の被害者の治療費
このような売上は、管理ができていないと、請求漏れや二重請求の危険があります。
また、入金があった際に、何の売上に対する入金か、わからなくなることがあります。
今回は、売上に対する未収金の管理がきちんと行われていなかった病院で、次の2つについてかいています。
(会計処理についての話のため、未収と言っても治療費滞納の話ではありません)
- 管理していないことで生じた問題
- 最低限の解決策
1.管理していないことで生じた問題
管理していないことで、請求漏れや二重請求が起こった
会社員の健康診断の請求については、窓口で本人が支払わず、後日、病院から会社へ直接請求することがありました。
この病院では、いつ、何の請求をしたのかを管理している資料がありませんでした。
あったのは請求書のコピーをつづったファイルだけでした。
日付だけの違った同じ内容の請求書があったり、どの人の健康診断のものか記載のないものもありました。
元帳の未収金と請求書を比較したところ、元帳に載っていない請求書が何枚もありました。
そのため、元帳に載っていない請求書のものは未収金に計上しました。
あわせて、元帳で未収金が残っているすべての請求先に請求と入金の確認をしました。
すると、請求漏れで今回初めて請求をした結果、入金されたところもありました。
一方で、すでに支払っているという回答だった、つまり、帳簿や請求書コピーが二重だった、というところもありました。
入金に対する請求内容がわからない
交通事故の被害者の治療費については、レセプト請求や労災請求と同様に、1か月分をまとめて保険会社に請求をします。
しかし、交通事故の被害者の治療費については、毎月きちんと請求ができず、あとで数か月分まとめて保険会社に請求するケースもあります。
・数か月後に保険会社から請求依頼がある
交通事故の治療費は、数か月後に保険会社から「うちの保険会社で負担しますので、まとめて請求してください」と言われることがあります。
・患者さんの同意書の提出があるまで、保険会社へ請求ができない
病院から保険会社へ治療費を請求する際、治療費の請求とあわせて、交通事故の診断書とレセプトを送付します。
この被害者の患者さんの診断書とレセプトは、患者さんの個人情報です。
その個人情報について、病院から保険会社へ送付するためには、患者さんから同意書を病院に提出してもらう必要があります。
患者さんの同意書を受け取ることで、保険会社への請求が可能になります。
逆に言うと、患者さんからの同意書の提出が遅れると、病院としては数か月分をまとめて保険会社に治療費を請求することになります。
保険会社からの入金は、保険会社名や支店名で振り込まれます。
通帳だけでは、どの被害者の何月分の治療費の入金かかわかりません。
特に、整形外科で交通事故の被害者の患者さんが多数いる場合は、保険会社も複数あり、請求・入金時期も複雑になります。
本来であれば、保険会社に問い合わせて、入金の確認をするところです。
しかし、入金担当者は、保険会社へ問い合わせしていませんでした。
未収金の元帳の請求金額と通帳の入金額を組み合わせて、同じになるものを未収金の入金として処理していました。
また、保険会社からの入金通知が郵送されますが、入金担当者がみられるようになっていませんでした。
そのため、交通事故の治療費の請求と入金について、過去1年さかのぼって照合したところ、ほとんど合っていない状態でした。
2.最低限の解決策
とりあえず、わたしにできる方法としては次の2つでした。
管理表を作って情報共有する
医療事務の現場と経理の入金担当が共有できる管理表のエクセルを作成しました。
請求日 | 請求担当 | 入金日 | 入金担当 | 請求金額 | 請求内容 |
9/20 | 〇〇 | 10/15 | ×× | 22,000 | A社へB様C様2名分 職員健診代 |
9/30 | △△ | 39,600 | D保険会社へE様7月~9月分 自賠責保険治療費 |
- 医療事務の処理
請求日、請求先、請求内容、請求金額を記録する - 経理担当の処理
・管理表をもとに未収金の経理処理を行う
・入金時には管理表への記入と経理処理を行う
・不明な請求や入金は医療事務に聞く
・医療事務に聞いてわからない入金は、入金元に問い合わせる
こうすることで、元帳での売上の未収金と実際の未収金の現状が合うようにしました。
発生主義に基づいて正しい管理を行う
発生主義とは、売上が確定した日に計上する経理の考え方です。
この病院では、請求書を送付した日に未収金として計上していました。
請求書の送付日に計上することの問題点は、数か月分の治療費や健康診断料をまとめて請求したときに、請求日の売上となってしまうことです。
完全な発生主義とはいえませんが、とりあえずできることとして、次のようにしました。
- 健康診断については、実施日に計上する
複数人いる場合は、最後の人の実施日で計上し、管理表に誰の分か記載する - 交通事故については、まとめ払いでも各請求月末時点にさかのぼって計上する
さかのぼりきれない場合は、直近の請求月末にまとめて計上し、管理表に何月分かを記載する - 特に決算のときには、3/31の年度末までに行った内容で未請求のものがないか確認する
相手への実際の請求はまだ行っていなくても先に会計処理ができるよう呼びかける
まとめ
- 管理していないことで生じた問題
・管理していないことで、請求漏れや二重請求が起こった
・入金に対する請求内容がわからない - 最低限の解決策
・管理表を作って情報共有する
・発生主義に基づいて正しい管理を行う
きちんと管理ができている場合は、特に問題はないかと思います。
ただ、病院での医療事務と経理のように、請求現場と経理が異なる部署の場合は、それぞれが協力して売上と未収の管理をすることが重要になります。