消費税は、基準期間の課税売上が1,000万円を超えると申告義務があります。
基準期間とは、個人の場合は2年前、法人の場合は通常は2つ前の事業年度のことをいいます。
インボイス制度が始まった2023年以降においては、登録をしている場合は課税売上に関係なく申告義務があります。
そのため、「基準期間の課税売上が1,000万円」は、申告と関係なくなったとおもえるかもしれませんが、2割特例のができるかどうかの判断基準に使われます。
今回は、2割特例の判断基準と、2025年に問題となる2023年分の課税売上の注意点について書いています。
2割特例の判断基準
消費税の計算では、売上分の消費税から経費分の消費税を引いた差額を払う原則の計算方法と、売上高の内容ごとに区分した1~6割分の消費税を払う簡易の計算方法があります。
2割特例とは、上記の計算方法では難しいという人のために、売上高の2割分の消費税を払うことができる特例です。
その特例を使える基準は、基準期間(個人は2年前・法人は2つ前の事業年度)の課税売上が1,000万円以下の場合です。
なぜなら、2割特例は、もともとが基準期間の課税売上が1,000万円以下の免税事業者が、インボイス登録して消費税の申告の負担を減らすことを目的に作られた制度のためです。
「基準期間の課税売上が1,000万円」の注意点
個人は2年前、法人は2つ前の事業年度の課税売上で判定をします。
例えば、2023年であれば、2021年の課税売上が1,000万円以下であれば、基本的に2割特例を使うことができます。
ここで問題になるのが、「課税売上が1,000万円」についてです。
課税売上が1,000万円とは、税抜金額が1,000万円である、ということです。
たとえば、10%の税率だけの場合は、税込1,100万円を税抜にすると1,000万円になります。
8%の税率だけの場合は、税込1,080万円を税抜にすると1,000万円になります。
そのため、原則的には、2年前・2つ前の事業年度の売上が税抜金額1,000以下かどうか、を見ればいいということになります。
ここで、2年前・2つ前の事業年度が免税(消費税の申告義務がない)だった場合に問題が起きます。
当時、売上についての申告義務がなかったため、消費税を納めていないことになります。
そのため、国のルールとして、免税だったときの売上金額は、税抜処理をせずに、売上金額をそのまま1,000万円以下かどうかで判定することとされています。
2年前・2つ前の事業年度の売上金額が1,000万円以下かどうかの判定について
・課税だった場合は、売上金額を税抜きにした金額で判定する
・免税だった場合は、売上金額をそのままで判定する
2025年に困らないために、2023年の売上は特に注意する
2023年は、10月という年の途中にインボイス制度が開始しています。
9月まで免税だった人や会社が、インボイス登録をして10月から課税になったというパターンが起こります。
同じ年・年度に消費税の免税と課税が混ざっているため、上記の基準期間の課税売上1,000万円の考え方が複雑になります。
2025年になると「基準期間の課税売上高」として、2023年の一年間の売上を確認しなければなりません。
たとえば、個人で2023年9月まで免税、10/1にインボイス登録で課税になった方を考えます。
9月までの免税のときの売り上げが880万円、10月からの課税のときの売り上げが330万円あったとします。
(消費税率はすべて10%とします。)
この場合の基準期間の課税売上の計算は、次のようになります。
このように、9月までの免税分そのままの金額880万円と、10月からの課税分330万円を税抜きにした金額300万円を合計した、1,180万円で1,000万円と比較することになります。
この場合は、残念ながら2025年に2割特例を使うことができません。
一年間全部を税抜きにしたり、課税分の10月だけを使って1,000万円と比較するのではない点、注意が必要です。
また、個人で不動産所得と事業所得がある場合、それぞれの所得で比較ではなく、その人の課税売上合計で比較する点も注意が必要です。
2023年の消費税の申告だけを考えると、10月からの課税分だけ考えればいいのですが、2025年のことを考えると、2023年は1年間の売上をしっかり見る必要があります。
まとめ
- 2割特例は、基準期間の課税売上が1,000以下の場合は、基本的に使える。
- 基準期間の課税売上が1,000万円というのは、免税の場合はそのままの金額、課税の場合は税抜き金額
- 2023年は、免税と課税が両方あるため売上高に注意し、2025年に2割特例が使えるかどうかを判断する