病院の預り金制度の処理と問題点への対策

税金

夜間で病院に救急搬送され、会計窓口が締まっている場合や治療費が高額になった場合、当日の治療費の支払いができないことがあります。

病院によっては、何も支払われないまま患者さんに帰宅されると困ります。
そのため、治療費の代わりに決まった金額を患者さんから預かる制度があります。

この時に預かるお金を「預り金」といいます。

ここでは、病院の預り金制度の処理と問題点への対策について書いています。

預り金制度の処理

経理処理

預り金の経理は、預かったときと、精算するときの2回処理があります。
預り金は、患者さんに治療費を払ってもらえないための一時預かりのお金です。
そのため、必ず精算で患者さんに返す必要があるため、負債として処理します。

借りた人に返す必要のある借入金と同じイメージです。

たとえば、診察を受けた後に、預り金5,000円を払った場合は、次のようになります。

(借方) 現金 5,000円  (貸方) 預り金 5,000円

後日、会計窓口で精算をする場合、実際の治療費が3,000円だった場合は、次のようになります。

(借方) 預り金 5,000円  (貸方)   現金   5,000円
(借方)  現金 3,000円  (貸方) 外来診療収益 3,000円

なお、決算時までに精算がされなかった場合、決算処理で治療費を未収金として計上します。
この処理を忘れると、売り上げの計上漏れになってしまいます。

(借方) 医療未収金 3,000円  (貸方) 外来診療収益 3,000円

上記は外来の例でしたが、病院では入院費用の未収は高額になるため、必ず入院時に数万円を保証金として預かることが多いです。
この場合は、退院時に預り金を精算します。
(経理処理は、外来の例と同じです)

事務処理

医事コンピューターやPOSレジのシステムで預りとして領収証を発行します。
患者さんは、後日の精算時に預り金の領収証と引き換えに預り金を返却してもらいます。
預りの領収証の控えやシステムの残高をみて、預り金の精算状況をチェックします。

治療費が確定している場合は、いつでも精算できるよう、領収証を用意し、預り金の領収証とセットで一時保管しておきます。

預り金があることは、それに対応する未収金もあります。
そのため、定期的な精算の呼びかけ、未収金の督促を行います。

また、決算時には未収金計上ができるよう、未収金の状況も日ごろからチェックします。

問題点と対策

患者さんは2回来院する手間がある

患者さんは預かり時と精算時で2回来院の必要があり、手間になります。

夜間の現金・会計事故防止のため細かい治療費の受け渡しはしない、あるいは、医療事務の軽減負担のため治療費の計算は翌日の外来診察で確定させる、という病院もあります。
その場合は、患者さんに確定した治療費と預りの精算を連絡しましょう。

預かり証紛失で精算ができない場合があります。
他人に間違って預りを返還しないようにするために、預かり証は必要です。
しかし、預かり証がないからといって精算しないままだと、患者さんと病院どちらも損をします。
そのため、ほかの方法での本人確認、後日領収証が出てきても精算はしない誓約書を書いてもらうなど、柔軟に対応できる精算のルールを決めておきます。

旅行先のけがで救急搬送された場合は、精算のための来院が困難です。
その場合は、郵便で預かり証を受け取る、精算処理は振り込みにすることで対応します。

預り金が残ったままになる

患者が精算に来ない場合は、預りが残ったままになります。
それに対応する治療費の未収金も残ったままになります。
預り金については、定期的に患者さんに精算を呼びかけ、決算などの決まった時期に未収金に補てん精算をするなど、解消のルールを決めるといいでしょう。

まとめ

病院の預り金制度の処理方法と、精算されない場合の対策についてかきました。
病院にとっての預り金は、それに対応する未収金と表裏一体のため、特に高額な手術代や入院費が未収となった場合は経営に大きく影響します。

一方で、高額であっても支払い手段は現金のみ、というところが現在でもあったりします。
患者さんが手持ちの現金がなくても支払えるように、クレジットカード決済の導入など、預り金制度によらず1回で精算できる方法を増やすことも必要かと思います。

夜間診療などで治療費は後日確定の場合は、確定時にすみやかに患者さんに連絡し、精算を呼びかけるようにしましょう。

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