「この取引をどの勘定科目で処理するか」というのは、経理をやるうえで悩むところです。
経理の勉強では、比較的取引の内容はわかりやすいものが多く、この取引はこの科目で処理する、というルールがある程度決まっています。
しかし、現実には取引の内容を見てもどの科目が正しいのか迷う場合があります。
基本的に、税金計算に関連しない勘定科目は、気にしすぎなくて問題ありません。
今回は、勘定科目について気にしすぎないでいい理由について書いています。
気にしすぎないでいい理由
気にしすぎないでいい理由は、「科目が違っていても税金計算に影響しないから」です。
勘定科目は、現金は現金、売り上げなら売上高、車両なら車両、というように、取引内容がそのまま勘定科目になっているものが多く、会計ソフトでもガイドがあるなど、迷わずに処理しやすいものが多いです。
基本的に、経理の勉強でやるような、資産(現金や建物などの財産)、負債(借金や未払金などの債務)、収入(売り上げや補助金など)、経費(材料費や通信費など)の区分さえ間違えなければ、ある程度は正しい税金計算ができます。
また、所得税も法人税も、基本は収入から経費を引いた利益を元に計算されます。
経理でどの科目で処理をしても、最終的には収入か経費にまとめられます。
売り上げや仕入れ、経費など明らかにその金額のすべてが税金計算の基礎になる取引は、科目が多少違ったとしても、区分が違わなければ最終的な利益は変わりません。
たとえば、freee会計など、経理で使うクラウド会計ソフトの月額利用料は全額経費になります。
その利用料をどの勘定科目で処理するのか、あまり気にしないで問題ありません。
毎月のサービスの利用料だから支払手数料にしてもいいですし、ネットを使ったサービスだから通信費にしてもいいです。
過去、ネットのライセンス関係の支払いは消耗品費にしていたところもありました。
また、仕事用の車両に関する経費をすべて車両関係費にまとめてもいいですし、運輸関係の会社であれば、車両の点検修理は車両関係費・ガソリン代は燃料費というように科目を細かく分けることもできます。
そのため、税金計算に影響しないものは、基本的にじぶんがわかりやすい科目や説明できる科目など、ある程度好みで処理して問題ありません。
わたしが勘定科目を見るときも、税金計算に影響しない科目違いはあまり細かく言わないようにしています。
気にしたほうがいい場合
基本的には、あまり気にしすぎないでいいのですが、気にしなければいけない場合が2つあります。
1.税金計算に影響する場合
税金計算に影響する勘定科目は、きちんとその科目で処理したほうがいいです。
たとえば、災害の義援金は寄附金になります。
法人税の申告では、寄附金に関する内容を書く必要があります。
また、寄附金の種類によって、経費にできる金額が変わります。
このときに、寄附金で処理をしていた場合、申告の際にはその勘定科目だけを確認するだけですみますし、会計と申告のソフトによっては、寄附金の金額などを連動してくれるものもあります。
しかし、寄附金を諸会費や雑費などいろいろな科目で処理していた場合、寄附金以外の科目に寄附金が紛れ込んでいないかを探す手間がかかります。
寄附金だけならいいのですが、交際費、固定資産関係(建物、機械、備品など)、支払った税金関係(源泉所得税など)…と申告に必要な科目も同じようにほかの科目に紛れ込んでいるかをチェックするのは大変です。
飲食の場合は、交際費になるか会議費になるか、など迷う部分もありますが、迷ってもこのどちらかで処理することだけ決めておけば、あとでこの2科目だけ確認・修正することが可能です。
そのため、税金計算に影響する科目は、きちんとその科目で処理をして、情報をその科目に集めておくほうがいいです。
2.特殊な会計ルールがある場合
たとえば、病院の場合は病院会計準則という会計ルールがあります。
通常の外来での診察は外来診療収益、予防接種や健康診断は保健予防活動収益、など同じ売り上げでも科目を分けないといけません。
これらはPOSレジなどシステム化している場合は、自動でシステムから出されるため、その情報を入れるだけで済みます。
・研修会に参加した時の交通費は、旅費交通費ではなく研修費で処理する
・自動車保険の料金は、保険料ではなく車両関係費で処理する
税金計算には影響しないため個人や一般企業ではどの科目で処理しても問題がないものであっても、上記のように細かく決められています。
領収証や保険会社名で科目の判断がつかないため、内容を確認して細かいルールに従った科目で処理しなければなりません。
同じように、学校法人や宗教法人など、一般企業とは異なる法人の場合は、特殊な会計ルールが決められているため、それに従った処理が必要になります。
決めたものは継続する
勘定科目を気にしなくていい理由と気にしたほうがいい場合について書きました。
科目については、税金計算に影響しないものであれば、あまり気にしなくて問題ないと考えます。
ただし、一度決めたルールについては、きちんと継続することが大切です。
毎月のアプリの利用料を通信費にするか支払手数料にするか、はどちらも全額経費になるため大きな問題ではありません。
問題なのは、先月は通信費にしたけど今月は支払手数料にする、というようにバラバラになってしまうことです。
ひとりで経理をしていても過去と違う処理をしてしまうことがあったり、複数人で経理をする場合はその人の好みもあったりします。
税金計算上は誤りでないとはいえ、一年間でバラバラな処理をした経理だと信用されづらいです。
そのため、きちんとルールを決めたら、それを継続することが重要になります。
(支払保険料が寄附金に入っているなど、明らかな誤りは継続せず修正しましょう)
なお、今の会計ソフトの場合は、ルールを決めたら来月以降は自動で同じ処理をしてくれる機能があるため、それをうまく活用することでバラバラな処理を防ぐことができます。