年末調整は、会社員の毎月の給与から天引きされている所得税について、扶養家族の状況や支払保険料などを考慮して12月の給与で精算する手続きをいいます。
基本的には会社員は確定申告義務がない方が多いため、何でも年末調整で精算できると思う方もいるようです。
わたしは、過去務めていた職場で、年末調整で医療費分の税金を取り返したいと言われたことがありました。
医療費控除だけでなく、年末調整では対応できない控除があるため、今回はそれらについて書いてみます。
なお、会社員がこれらの控除を受けるためには、確定申告を行うこととなります。
医療費控除
会社員の方が、自身の医療費と同一生計の配偶者・親族の医療費について、1年間に実際に支払った医療費の金額をベースに計算します。
ただし、保険金などで補てんされる金額は支払った医療費の額から控除されます。
たとえば、妊娠・出産の場合、妊娠判明後の検査費用、出産のための入院費は医療費控除の対象になります。
ただし、協会けんぽ等から出産育児一時金が支給された場合の金額は、これらの医療費から控除しなければなりません。
また、医療費控除の対象となる医療費は国のルールで決まっている、公共交通機関をつかった通院費も控除対象となるなど、細かいルールがあります。
寄附金控除
ふるさと納税の納税先が5か所以内であれば、「ワンストップ特例制度」で確定申告しなくても寄附金控除が適用されます。
ただし、医療費控除などほかの控除を受けるために確定申告をする場合は、「ワンストップ特例制度」分もあわせて申告する必要があります。
また、6か所以上のふるさと納税やふるさと納税以外の寄附は、確定申告する必要があります。
12月で年末調整が完了し、年収が確定する会社に勤めている場合は、確定した年収からシミュレーションし、年内にふるさと納税を急いで行って節税ということも、理論上はできます。
ただし、同じことを考える人の殺到によるサーバー落ちのリスク、自治体によっては年末より早い締め切りを設けるなど、必ずしも年内にできるとは限りません。
年明けの寄附(クレジット決済も含む)は翌年の寄附になります。
そのため、ふるさと納税のポータルサイトでは年末での寄附は推奨されていないようです。
雑損控除
会社員が、自身または同一生計の配偶者・親族(所得要件あり)の住宅や家財が災害・盗難・横領によって被害を受けた場合に適用されます。
被災家屋の取り壊し費用など、災害に関連した支出も対象になります。
別荘や時価30万円超の骨とう品など、対象にならない家財もあります。
損害の原因は、災害(火災など人災も入ります)・盗難・横領に限定のため、詐欺や恐喝は対象外です。
住宅ローン控除の1年目
住宅ローン控除は2年目以降は、年末調整で控除可能です。
ただし、1年目は必ず確定申告することが条件になっています。
1年目に確定申告をすることで、税務署から2年目以降の申告書用紙が届きます。
2年目以降は、年末調整の際にその申告書用紙を会社に提出して適用を受けます。
なお、年末調整に間に合わなかった場合は、確定申告で精算できます。
まとめ
- 医療費控除、寄付金控除、雑損控除、住宅ローン控除の1年目は年末調整できない
- これらは確定申告で精算する
これらの控除がある方は、確定申告の準備をしておきましょう。