決算になると、棚卸といって、商品の在庫を確認する作業があります。
スーパーやホームセンターなどで、棚卸のために休業したり、開店中に棚卸作業をしている光景は見たことがあるかもしれません。
モノを売らない病院においても、多数の医薬品や診療材料の決算棚卸は必要な作業です。
基本的には、スーパーなどの棚卸と同じ部分もありますが、SPDを採用している場合は、注意すべき点もあります。
今回は、病院の決算棚卸の原則と、SPDの場合の注意点について書いています。
なお、SPDについては下記も参照ください。
決算棚卸とは
決算棚卸とは、決算の時に実際の在庫を数えて、その在庫分の会計処理をすることです。
病院の場合は、使用する医薬品や診療材料の種類が多数のため、購入や使用を都度記録することが大変です。
そのため、普段は購入時にすべて費用として計上するところが多いです。
しかし、決算の時に残っている在庫については、実際に使っていないため、費用になりません。
実際に使っていないものまで費用にすると、会計や税金計算が正しくできません。
決算の時には、実地棚卸と言って、実際に残っている在庫を数えます。
その在庫は費用から資産に変更をする会計処理をします。
勘定科目の名前は、費用の場合は「医薬品費」「診療材料費」、資産の場合は「医薬品」「診療材料」となります。
たとえば、決算日時点で6個(単価100円)が残っていたとします。
未使用の6個は、「診療材料費」という費用から「診療材料」という資産(在庫)に変更します。
(借方) 診療材料 600円 (貸方) 診療材料費 600円
ただし、いくら残っているからといっても、使用期限の切れたものは使えないため、資産にはなりません。
期限切れ間近のものは使い切るか返品を検討するなど、注意が必要です。
廃棄する場合は、専門業者に委託し、廃棄証明(マニフェスト)をもらい、保管します。
廃棄品は費用(経費)で処理できます。
SPDの場合の決算棚卸の注意点
SPDを採用している場合、購入や在庫管理は基本的にSPD業者に委託をしています。
委託の範囲などがそれぞれの病院によって異なるため、SPD業者と病院の契約内容を確認します。
どの時点で病院が購入しているか、病院のモノになったか、を判断します。
多くの場合、病院に医薬品などの箱を置いているだけでは、病院のモノではないと考えます。
つまり、SPD業者のモノが病院においてあるだけ、という扱いです。
その医薬品の箱をあけた時点で、病院のモノとしてSPD業者から購入した扱いになります。
そのため、決算の棚卸では、各部署においてある医薬品や診療材料のうち、開封済みのモノだけを在庫として考えます。
会計処理は、事務処理の手間を考慮し、開封時(購入時)に費用処理をします。
(病院では、医薬品や診療材料の種類が多いため、購入時に費用処理をするところが多いです)
たとえば、10個(単価100円)入りの診療材料が入った段ボールが1箱あります。
購入や発注などのバーコード管理は1箱単位で行っていたとします。
開封時に全部購入した処理をします。
(借方) 診療材料費 1,000円 (貸方) 買掛金 1,000円
決算日時点で6個(単価100円)が残っていた場合、未使用の6個は費用から資産(在庫)に変更します。
(借方) 診療材料 600円 (貸方) 診療材料費 600円
なお、決算日時点で、箱が未開封だったときは、会計処理はありません。
未開封の箱は、SPD業者のモノであって、病院のモノではないためです。
誤って棚卸在庫として数えないように注意しましょう。
まとめ
- 決算棚卸は、未使用在庫を費用から資産変更する会計処理がある
- SPDを採用している場合は、開封・未開封に注意する
病院の場合は、事務職員が理解できていても、現場の医療スタッフが理解できていないことがあります。
きちんと医療スタッフに決算棚卸の重要性を理解してもらうことも大切です。