個人の家計簿でも会社の経理でも、お金を締めることは重要なことです。
「お金を締める」と言っても、財布のヒモを締める・支出を減らす、という意味ではありません。
月末などのタイミングで、その時点でお金がいくら残っているか、入金、出金がいくらあったか、を確認することです。
今回は、毎日現金売り上げがあるお店や病院などの「レジ締め」の重要性について書いています。
(職場によっては、レジ精算、現金精算など、ほかの呼び方もあります)
毎日レジ締めが必要な理由
毎日レジ締めが必要な理由は次の2つです。
1.ずれたときの原因が追いやすい
最大の理由がこれです。
基本的に、商品の情報や注文などの管理システムは、レジシステムが連携していることが多いです。
レジでバーコードを読み取ることで、システムお客さんが払うお金が自動計算されます。
そして、お客さんから受け取ったお金をレジに入れると、おつりが自動でレジから出てきます。
これで、請求金額とレジ入金額がちょうど合うため、何もおかしいことはなさそうです。
しかし、実際には、売り上げやレジをシステム化していても、ずれがあります。
意外とあったのが、おつりの受け取り忘れです。
- レジから払い出されたおつりをお客さんに渡す際に、レジの払い出し口に一部残っていた。
- トレーにおつりをきちんと出したけれど、お客さんが財布に一部入れ忘れた。
レジが混雑しているとこういうことが起こりやすいです。
ここで、レジ締めを毎日行うことで、ずれた原因を記憶の新しいうちに思い出すことができます。
相手まで思い出すことができると、後できちんとお釣りを渡すこともできます。
2.未収の把握ができる
特に病院の場合、レジでお金を支払うケースもあれば、レジでお金を支払わないケースもあります。
- 子どもの受診や労災などで、レジでのお金の支払いが不要
- 診察受けた後、うっかりお金を支払わずに患者さんが帰ってしまう
- 救急搬送されて病院で手術、そのまま他の病院へ救急車で転院
上記以外にも、単純な未収金などもあり、書くとキリがないくらいです。
そのため、毎日レジのチェックをすることで、
- どの患者さんが未収だったか
- 過去の未収を今日払ってくれた人がいた
- 健診の代金は本人のレジ支払いではなく後日会社に請求
など、様々な要因を把握することが重要になります。
少ないクリニックでも1日に数十人、大病院だと数百人の患者さんが外来受診することを考えると毎日しないと把握が困難になります。
特に、入院施設のある病院で、現金払いのみ、1か月分の入院費はレセプト後の翌月10日請求の場合、全員が請求日に現金払いできないため、入金状況の把握は重要になります。
不正や事故防止のためのレジ締め
レジ締めについては、ずれや未収の把握だけでなく、不正や紛失などの事故防止も大切になります。
1.レジ担当者は決めておく
不正や事故があった場合、誰が原因なのかを明らかにするためです。
担当者を決めずに手の空いている人がレジに立つようにすると、いろんな人がレジ処理することになります。
締め時にずれがあった場合に、だれの、何の、なぜ、というずれの原因がわからなくなります。
そのため、レジ担当をきちんと決め、ほかの人はレジを触ることがないようにします。
もし、レジが混雑してほかの人が手伝う場合は、誰がどの処理をしたかわかるようにします。
過去勤務した病院では、請求書の病院控えに処理者のハンコを押すルールがありました。
こうすることで、どの患者さんのレジ処理をだれが行ったか明確になります。
2.レジ担当と締め担当を別の人が行う
悪意のあるレジ担当者がそのまま締め作業を行った場合を考えます。
預かったお金をレジに入れずにポケットに入れる等の不正をしました。
自分の不正を無視して締め作業を行って、ずれなし、正しいと処理するかもしれません。
不正ではなく、単純なミスでも怒られるのが怖くて、ずれの報告をしないかもしれません。
こういったことを避けるために、毎日のレジ担当者と締め担当者は別々に決めます。
そして、締め担当者がずれを発見してレジ担当者に確認するようにします。
また、ローテーションを組むなどして、相互チェックで不正や事故や起こらないような仕組みをつくります。
さらに、レジ締め担当者が回収した売り上げを会社の金庫に一時保管するときも、経理担当者などが再度チェックを行い、回収後の紛失などを防ぐようにします。
3.システム化する
今では、タブレット注文の飲食店や、バーコード読み取りのPOSレジなど、システム化されているところが多いかと思います。
レジ担当者が、預かったお金をレジに入れずにポケットに1万円を入れる不正があった場合を考えます。
その1万円分のお店側のレシート控えも、その担当者のポケットに入れられてしまいました。
別の人がレジ締めをしたときに、売り上げのシステムがあれば、そのシステムの集計と現金の残高をチェックすることで、不正を防ぐことができます。
もし、システムの集計がなければ、レシートの控えを手で集計することになります。
1万円もレシート控えも不正をしたレジ担当者のポケットにあるため、不正に気付くことができません。
不正がなくても単純に集計だけでも毎日手間になります。
そのため、日々の現金を管理できるレジシステムや、売り上げを管理できるシステムを導入するようにします。
大がかりなものでなくても、タブレットで管理できるPOSレジシステムがあります。
また、レジから回収した売り上げを専用の回収システムに入れると、そのシステムから銀行への預入処理ができる、現金は警備会社が回収する、というのもあります。
規模の大きいところだと、こういうシステムの導入もいいかと思います。
重要なのは、システムを導入することで、不正を防ぐための客観的な証拠を残すことにあります。
4.ミスを責めない社内の雰囲気をつくる
意外と大事なところです。
最初に書いたお釣りの渡し忘れは、担当者がいくらがんばってもゼロにはできません。
というのは、レジ担当者ではなく、お客さんのうっかりミスが原因のこともあるためです。
そのため、ずれがあった場合には、ずれがあったことを責めない社内の雰囲気作りが大事です。
ちょっとしたことでも責められる職場だと、このようなずれを報告しづらくなります。
そうなると、いずれは大きなミスや事故があっても隠すようになるかもしれません。
原因究明や今後の再発防止は大事ですが、過度に責めることはしないようにします。
また、レジ担当者にとっては言いにくいことかもしれませんが、会社のお金のため、隠さずにずれがあったことは報告できるようにします。
社内の雰囲気がいいと、他のレジ担当者が当番であっても、お釣りを渡し忘れたお客さんが来た時に、お釣りを渡せるなどのフォロー体制ができるため、お客さんにとってもメリットがあります。
まとめ
ここまで、毎日のレジ締めが必要な理由と、不正や事故の防止方法について書きました。
レジ締めは、会社のお金や売り上げの確認のため、その管理には、経理や総務担当者はとても気を使います。
その一方、レジ担当者は経理担当者ほど気を使っていないこともあります。
今では、現金以外の精算方法も増えて、レジ現金の事故や不正はめったにないかもしれません。
それでも、絶対にないとは言い切れないため、折を見てレジ締めの重要性は社内で共有しましょう。