【発生主義】取引の事実があれば、目の前でお金が動いていなくても、経理する必要がある

税金


現金払いの場合は、モノの購入と現金の支払いは同時に行われているため、現金の支払いの経理のときのモノの購入の経理もできました。

会計では、これを現金主義といいます。

しかし、現金以外の支払い方法の増えた現在では、モノの購入と支払いにタイムラグがあるため、支払いの経理だけでなく、モノの購入の時点でも経理する必要があります。

会計では、これを発生主義といいます。

ここでは、発生主義の考え方と必要な理由、決算での注意点について書いています。

発生主義を料理でいうと、レジでの支払いだけでなく食べた時点も記録すること

飲食店で何も考えずにトッピングやサイドメニューをいろいろ追加した結果、レジでの支払金額が思っていたより高くなってしまったという経験はないでしょうか。

「レジでの支払場面でだけお金を意識する」ことを会計では、現金主義といいます。

反対に、メニュー表をみて、きちんと金額を頭の中やスマホなどで計算しながら注文していくと、注文の時点で支払金額がわかるため、レジでしまったと思うことはないでしょう。

「レジでの実際の支払いの場面ではない、注文のときにもお金を意識する」ことを会計では、発生主義といいます。

さらに細かくいうと、発生主義の考え方は、注文の時点ではなく、注文した料理を食べた時点でお金を記録するという考え方です。

注文した時点では、実際にその料理がくることは確定しません。売り切れの場合もあります。
手違いで注文していない料理がきた場合は、そのまま料理を返すでしょう。
この時点では、未確定のため、記録をしません。

自分が料理を「食べた」時点で、料理というサービスを受けた事実が確定します。
同時に、お金を支払う義務が確定します。
発生主義の考え方では、目の前でお金のやりとりはないですが、この時点で記録をします。

そして、レジでお金を支払って、その義務を果たします。
発生主義はこのときも記録をします。
(お金が動いたので、現金主義でもここは記録します)

整理すると、発生主義は次の2つの時点を記録する考え方です。

  • お金のやりとりはないけど、サービスを受けたことが確定した時点
    (モノの購入の場合は自分のモノになった時点)
  • お金のやりとりがあった時点
    (こちらは現金主義でも記録する) 

発生主義の考え方が必要な理由

現在では現金払い以外の取引が多いため、現金が動いた時点で記録をする現金主義には限界があります。

現在ではクレジットカードや口座振込・振替などの方法で、実際の取引日とは別の日にお金が動くことが多いです。
そのため、取引事実のあった日で記録をするということが重要になります。

上記の料理の例でいうと、レジでクレジットカードで精算すると、実際の支払日は後日になります。
12月に忘年会をした飲食費がクレジットカード払いで2月に引き落としされた場合、2月にならないと12月に飲食した事実が帳簿に載らないことになってしまいます。
2月に忘年会の費用がそのまま飲食費で記録されていたら、違和感があるはずです。

また、売上に対する入金方法が複数ある場合、入金日の売上だけを記録するだけでは、その売上が今日のものか過去のものか把握できなくなります。

こういった場合のために、事実が発生した時点で記録する必要があります。

・飲食をした場合は、飲食をした日に未払の記録
・売上については、売上が確定した日に未収の記録

特に、売上については計上漏れにならないよう注意が必要です。
記録をしておくことで、相手から未入金だった場合に、請求もれなのか、請求したけど相手が入金していないのか、といったことも把握できます。

このような、お金の動いていない場面において「いつ、何の」取引事実があったのか把握するために発生主義の考え方が必要になります。

決算では特に注意が必要

普段はある程度きちんとしていなくても、さしつかえありません。
クレジットカードの請求を見て、引き落としの日にまとめて経費としているところもあります。
多少の日付のずれでも税金計算に影響しないためです。

決算のときには、きちんと対応する必要があります。
今年の売上・経費か来年の売上・経費かで税金の額が変わるためです。

個人の場合、事業は暦年(1/1~12/31)ごとに区切られます。
法人の場合、事業年度ごとに区切られます。
12月に行った取引に対して12月中にお金のやりとりがあればいいのですが、現実には、入金や支払いが来年1月になることも多いかと思います。

現金払い以外の売上や経費などで、12月に確定したものはきちんと記録します。
来年1月以降の請求から12月以前の取引がないか、あわせて確認します。
そして、もれていたものは今年の分として記録する必要があります。

たとえば、2月引き落としのクレジットカード明細に、12月に忘年会をした飲食費があった場合は、12月の経費として記録しているかを確認します。

取引が暦年・事業年度の区切りを越える場合は、注意が必要です。

まとめ

  • お金のやりとりはないけど、サービスを受けたことが確定した時点も記録する
  • 「いつ、何の」取引事実があったのか把握するため
  • 決算で暦年・事業年度の区切りを越える場合は、注意が必要

ふだん経理をしない人には、なじみのない考え方ですが、発生主義は経理に必要な考え方です。

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