「できない理由を探さないで。できる方法を考えて」
この言葉は、仕事の進め方では前向きで力のある考え方だと思います。
しかし、この考え方をそのまま税金の話に当てはめてしまうと、あとから困ることになるケースもあります。
それは、税法が発想力や工夫を競う世界ではなく、法律で決められた要件を満たしているかどうかを見る世界だからです。
今回は、税金の世界ではどのように考えるのが安心なのか、についてかいています。
税法は「工夫の余地」が小さい世界
税金の話をしていると、「何とかならないかな」「別のやり方はないかな」と考えたくなることがあります。
制度を正しく理解したうえでの選択や工夫は、もちろん大切ですし、制度の選び方によって結果が変わることもあります。
ただ、税法にはそれぞれ制度の目的があり、はっきりとした要件が決められています。
その枠から外れてしまうと、どれだけ気持ちとしては事業のためであっても、どれだけ合理的に思えても、認められないことがあります。
税法は、「実質的にはこうだから大丈夫」「事業のためにやっているのだから問題ないはず」といった事情を広くくみ取る世界というよりも、法律に書かれている条件に当てはまっているかどうかを見る世界です。
もう一つ大切なのが、検討するタイミングです。
何かをしたあとで「これ、経費にできませんか」「今から整えれば何とかなりませんか」と考える場合、すでに何かをした事実は決まっています。
その事実が制度の要件と合っていない場合、その制度に合うように過去の事実を変えることはできません。
そのときは、どうしても「難しいです」とお伝えするしかないこともあります。
一方で、やる前であれば話は変わります。
制度の目的や条件を確認したうえで、どのような形にすればその要件を満たせるのかを考えることができます。
「できる方法を考えて」進めるのであれば、法律の条件を満たすためにどう準備するかを考えること。
これが、税金の世界での前向きな考え方だと思っています。
税法において問われるのは、説明のうまさではなく、最初から要件を満たす設計になっているかどうかです。
「できる方法」を考えすぎると起きやすいこと
ご相談を受けていると、「実質的には仕事に関係しているんです」「他の人もやっていると聞きました」「今から形を整えれば大丈夫ですよね?」というお話をいただくことがあります。
どれも悪い考えではありませんし、真面目に事業を考えているからこそ出てくる言葉だと思います。
ただ、税法では気持ちや周りの状況よりも、決められた要件を満たしているかどうかが大切になります。
たとえば、個人事業でよく出てくる制度に「青色専従者給与」があります。
青色専従者給与は、一定の条件を満たせば、家族に支払う給与を必要経費にできる制度です。
名前にあるとおり「専従」であることが前提です。
つまり、その家族が主にその事業に従事していることが求められます。
基本的には外で別のお仕事をしている兼業状態では認められませんし、実際に事業に関わっていることや、その仕事内容に見合った金額であることも大切です。
また、事前の届出も必要になります。
それでも、「少し手伝ってくれているから」「税金を安くしたいから」「税務署はそこまで見ないでしょ」といった理由で、制度の前提と合わない運用をしているケースがあります。
税理士として従事していない家族の届け出は取り下げますし、勤務実態は確認させていただいています。
後から整えようとしても、働き方そのものや実態までは変えられません。
制度を使うかどうかは、始める前にしっかり考えることが大切です。
税金は、あとから理屈をつけて合わせるものではなく、最初にルールを確認してから動くものだと考えています。
おわりに
税金の世界で大切なのは、無理に「できる方法」を探し続けることではありません。
その制度は何のためにあるのか、どんな条件があるのか、自分はそれを満たしているのか。
もし使いたいのであれば、事前にどのように整えてどう動くべきなのか。
この順番で考えることが、安心して事業を続けるための近道です。
税金に限らず、事実に対して事後的に都合よく無理やり法律を当てはめようとするのは、リスクが高いです。
税金は、工夫次第でいくらでも減らせるものではありません。
適用できる前提条件を正しく理解して、それに合うようにきちんと準備をしておけば、使える制度もきちんとあります。
「とりあえず」動いてあとから悩むよりも、少し立ち止まって「事前に」確認することが必要です。

