「いままで何も言われていない」
「この業界では当たり前」
そう言われて、内容や仕組みをよく理解しないまま、節税やお金の流れの仕組みに乗ってしまう人を、税理士として何度も見てきました。
ここでいう「仕組み」とは、お金がどこから来て、誰の売上になって、なぜその税金の扱いになるのかという一連の流れのことです。
そして、そうした話に対して、
「それに対して大丈夫だという法的根拠はありますか?」
「その仕組みについて、事前に税理士と税務リスクの検討はしていますか?」
「税務署と協議したり、公式な見解を確認していますか?」
と聞くと、はっきり答えられないケースが少なくありません。
今回は、病院だけでなく接骨院や鍼灸院を含む保険証を取り扱う個人の医療関係で「保険だから非課税」とは限らない理由についてかいています。
医療関係でも「保険だから非課税」と簡単には言えない
医療分野に関する税務は、医療の実務と税法の両方を知らないと見落としやすい部分が多くあります。
だからこそ、「業者がそう言っている」「よそもやっている」という理由だけで判断してはいけません。
実際、医療分野では、医療機関が他の医療機関を介して受け取る診療報酬について、
・消費税の非課税に当たるのか
・社会保険診療報酬に該当するのか
をめぐり、国税局が文書回答事例として公表するほど、慎重な整理が必要とされています。
東京国税局 令和7年3月11日付 文書回答事例
「連携病理診断の仕組みにより病理診断医が受領する診療報酬に係る税務上の取扱いについて」
また、保険証を使わずに受診した場合には、同じ治療や施術であっても保険診療でないという理由で、10割負担に加えて消費税が課税されます。
この点からも、「保険適用=常に非課税」という理解は正確ではないことが分かります。
単に「保険だから」「医療だから」と言うだけでは、消費税や診療報酬の取り扱いを判断することはできず、明確に「消費税も事業税も非課税」とは言い切れません。
非課税の判断に必要な視点と確認事項
非課税かどうかを判断するには、次の点をきちんと整理して検討する必要があります。
税金関係の根拠を確認するための情報としては、
・業務内容の詳細
・誰がどの立場で医療行為を行っているのか
・診療報酬との関係(レセプトの作成者、提出者、入金ルート等)
・契約関係や責任の所在
・健康保険法
・厚生労働省の通知・資料
税金関係の根拠規定としては、
・消費税法では、別表第二という項目で国が非課税と明確に指定しているものだけが非課税
・地方税法72条49の12で社会保険診療報酬が個人の事業税で非課税
・社会保険診療報酬については、租税特別措置法第26条第2項で指定されている
つまり、取引の実態を踏まえたうえで、
・その取引が、消費税法別表第二に該当するのか
・社会保険診療報酬として、租税特別措置法の指定に当てはまるのか
なども確認しながら判断する必要があります。
「保険」「医療」という言葉だけで自動的に非課税になるわけではありません。
ここを曖昧にしたまま進むのは、あとから税務上の問題になる可能性があります。
おわりに
実務の中では、内容をきちんと理解し、資料を整理して検討し、その結果について事前に税務署へ確認を行うことで、後から否認されるリスクを最小化できます。
重要なのは、結果が非課税かどうかではなく、その判断に至るまでのプロセスを踏んでいるかどうかです。
先に確認して、非課税でないと分かれば、課税されることになってしまいます。
しかし、あとから課税だと指摘を受けて修正申告が必要・追加で税金を払うといったリスクは広がりません。
・知らない人の車に乗らない
・正体の分からないアプリをダウンロードしない
それと同じように、理解できていない仕組みには乗らない。
「業界では当たり前」
「今まで何も言われていない」
それをそのままうのみにせず、じぶんで問題点なども理解したうえで、納得して選ぶ。
おそらく、医療系と税務と両方がわからないと、単に「保険・医療だから非課税」と流して、こういった検討は行われることすらないと思います。
わたしは、医療法人での医事課と経理の経験を持つ税理士だから、診療報酬の仕組みや税務上のリスクを整理する重要性を身をもって実感しています。
だからこそ、気づいた点はお客様に確認をとり、事前に資料を整理し税務上非課税化で問題ないかを確認の上、お客様に丁寧に説明するよう心がけています。
