福利厚生といえば、本来は会社が職員のために本来の給与以外の形で職員へのサービスとして提供するもの・求人の際に会社の魅力としてアピールするためのものとして用意されています。
しかし、保養所など使わない人にとっては福利厚生としては無意味ですし、どうせならじぶんで選べるものがあればいいのに…と思う場合もあります。
今回は、選択できる福利厚生の注意点について書いています。
現金支給に近い福利厚生は基本的に給与課税される
給与として税金がかかるものは、会社から給与として現金で直接受けるもの以外に、現金以外のモノやサービスで受ける利益も対象とされます。
ただし、現金(通勤手当や慶弔見舞金など)、現金以外(保養所の利用や勤続記念品など)のどちらの場合も、給与として税金がかからないための細かいルールがあります。
基本的に、現金以外で受ける場合は、一般的にきちんとした理由があって、あまり高額でないものやサービスを受けたときは、給与課税されないようになっています。
たとえば、毎年会社が主催して忘年会を行う場合の参加費、職員全員が忘年会の代わりに会社からクリスマスケーキをもらう程度であれば、高額でない場合は給与課税されず会社の福利厚生費として扱われます。
このように書くと、日持ちしないケーキをもらうよりも、せっかくなら好きなものをもらいたい、と思う人がいるかもしれません。
ケーキの代わりにカタログギフト(受け取った人がカタログから好きなものを選ぶ)や商品券などをもらえば、自由に好きなものを選んで買うことができます。
しかし、カタログギフトや商品券で自由に好きなものを選んで買える方式の場合は、現金をもらって自由にものを買っているのと同じだという理由で給与課税されます。
会社が忘年会を主催したり、ケーキを配布するのは、会社が企画立案した職員へ一律にサービスとして行っているもので、職員側に選択権がないため従業員の給与とされません。
一方で1万円分のカタログギフトや商品券をもらう場合は、職員へ一律に行ったとしても、職員に選択権があることから、給与で1万円もらうのと同じという考え方を国はしています。
現金ではない形でもらえば税金がかからないと思っている人は意外と多いため、注意が必要です。
過去の職場で、経理を知らない人が、退職者への餞別で金券を会社の経費で渡していたことがありました。
花束やちょっとした記念品であれば給与にならないのですが、金券はその退職者の給与として課税されます。
カフェテリアプランの場合
最近では、福利厚生の一環としてカフェテリアプランというものがあります。
カフェテリアプランとは、会社が職員に毎年一律にポイントを与えて、職員はプランの中からポイントを使って自由に買い物やサービスを受けることができる、というものです。
会社がカフェテリアプランのサービス提供会社にお金を払って福利厚生を委託している、という感覚です。
導入している企業が多いことから、国もルールを決めています。
ポイントを換金できず役職を問わず一律に付与する等の制度であれば、ポイントをもらった時点で職員の給与課税になることはありません。
しかし、旅行や買い物など、ポイントを使用した時点で職員の給与課税とされます。
従来の福利厚生とは違うポイントの使用という方法であっても、従来の福利厚生と給与のように、会社主催で職員に一律に提供するものは給与課税されず、職員が自由に選択できるものは給与課税されるという考え方を基本としています。
「国税不服審判所」という税金の裁判のようなところでは、会社のレクリエーションやクラブ活動、人間ドックの補助であれば、従来の会社主催の福利厚生として給与課税されず、財形貯蓄やスポーツ施設のように職員が自由に利用できるものは給与課税と判断されています(下記裁決の別表1を確認ください)。
国税不服審判所:令和2年1月20日裁決
国税不服審判所:令和2年1月20日裁決(別表1 本件各メニューの内容等)
ポイントの場合は、金券と違って見えるものではなく、お金と違う感じがするかもしれません。
しかし、性質としてはお金でもらっているのと変わらないため、使い道によって給与と同じ扱いになってしまいます。
おわりに
選択できる福利厚生の注意点について書きました。
給与ではないけど自由に使える福利厚生といえば良い会社という印象を持つかもしれません。
しかし、実際にはカタログギフトや金券などはもらった時点で、カフェテリアプランはポイントを使った時点で給与課税されます。
過去の職場では、社員割引制度があったところもありますが、基本的には、職員へのサービスといいつつ、給与を浪費させる手段のほうが多く、日常生活を整えたいタイプだと浪費系の福利厚生は合わないと思います。
また、どのような形式であれ、会社の福利厚生を利用するには会社への申請手続きが必要であったり、利用状況が会社に把握される場合があります。そのため、福利厚生として存在していても使いづらい場合もあります。
個人的には、日常の職場環境の充実や課税されても使い道が完全自由で会社に把握されない給与として受け取るほうがいいかなと思います。