クレジットカードは、実店舗の買い物だけでなく、ネット上での決済手段でも利用することが多くなっています。
しかし、支払先との取引の間にカード会社が入ること、決済をした日とカードの口座からの引き落とし日に時間差があることから、経理をする上では注意が必要です。
今回は、クレジットカードで支払いをした場合の経理での注意点について書いています。
決済と引き落としに時間差があるため、年末や年度末の処理に注意
クレジットカードで支払いをした場合、引き落とし日までの間に時間差があります。
たとえば、「毎月15日締め、翌月10日口座引き落とし」のカードであれば、決済日と口座引き落とし日との関係は次のようになります。
① 2/14決済 → 2/15締め → 3/10口座引き落とし
② 2/16決済 → 3/15締め → 4/10口座引き落とし
③ 3/31決済 → 4/15締め → 5/10口座引き落とし
3月決算の会社の場合、3/31までが当期、4/1からが翌期として、別の年度となります。
当期に決済したものは、基本的に当期の経費になります。
そのため、上記の②や③の場合は、口座引き落としが翌期だとしても、当期の経費になります。
決済の都度経理できていれば問題ありませんが、実際にはカード明細が届いてからまとめて経理するかと思います。
当期の年度末3/31時点では口座引き落としされていないため、決算では未払金として処理します。
たとえば、3月にカード決済をした旅費交通費1万円が、5月口座引き落とし予定の場合は次のようになります。
3/31決算での仕訳
(借方) 旅費交通費 10,000円 (貸方) 未払金 10,000円
個人の場合は、確定申告の際に、1月2月のカード明細に12月までの決済分の経費の計上もれがないか、を注意する必要があります。
カード明細だけでは経費にできない
クレジットカードの明細は、発行会社が、決済日と相手先と金額を並べて表示しています。
見た目も整っているため、この明細があれば、経費処理できる証拠になりそうです。
しかし、実際には、カード明細で経費の証拠にすることはできません。
下記ページにて、国がカード明細だけでは経費にできないと書いています。
クレジットカード会社からの請求明細書(国税庁質疑応答)
国のルールで、経費処理ができる請求書や明細書については、決められています。
消費税の経費に関するものについては、特に細かく決められています。
カード決済の内容を経費にするためには、相手先から受け取った領収証などを保管する必要があります。
細かく言うと、カード明細の各決済について、次の内容が書かれた領収証などを保管する必要があります。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称(電話番号などで事業者特定できる場合は、屋号や略称OK)及び「登録番号」
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率対象取引の場合には、取引内容とその旨)
④ 取引の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ ④に対する消費税額等
⑥ 請求先の氏名又は名称
実際には、相手から受け取ったレシートなどをクレジットカード明細と合わせて保存します。
従業員個人のカードを使った経費精算に注意
従業員個人のカードを使った決済でも、事業のために必要なものであれば、経費にできます。
しかし、会社の従業員個人のカードで決済した場合は、特に注意が必要です。
カード明細は一か月単位で発行されるため、経費精算に関係ない決済も色々記載されています。
そのため、カード明細を会社に提出することは、個人の1か月分のプライバシーを会社に出すのと同じと考える人もいます。
過去の関与先で、カード明細のうち、経費精算に必要な1行だけを切り取ったコピーしか資料がないのに精算完了と処理されてしまったことがありました。
ここまでの記事を読んでくださった方なら、これが経費にならないことは分かるかと思います。
対策としては、従業員個人でのクレジットカード決済をさせないことでしょう。
従業員個人のクレジットカード決済は、明細でプライバシーを会社に出すという面もありますが、決済に伴うポイントが従業員のカードに付きます。
会社を利用して従業員がポイントを自分のものにしている、という考え方もできます。
現在の国のルールでは、会社の経費精算で会社員がもらったポイントに税金はかかっていません。
ただ、個人カードで経費精算を行う社員とそうでない社員に不公平感があります。
このように、従業員個人でのクレジットカード決済による経費精算には、公私の区別ができないという、管理上も問題があります。
会社の経費として買うものは、会社のカード等で買うようにします。
どうしても従業員個人で経費精算が必要なものは、現金精算に限定するというのは極端ですが、会社として不公平感の出ないルール作りは必要です。
まとめ
- 時間差があるため、決算後のカード明細を見て経費の計上漏れがないか注意
- カード明細だけでは、経費にできない。各取引の領収証等が必要
- 職員個人のカード決済での経費精算は、できるだけ避ける