会社や個人事業を行う上で、固定資産は高額で長期間使用するものです。
そのため、経理や税金計算において、現金などと同様に重要な論点になります。
現金や預金であれば、通常は会社の経営者や現場の責任者など限られた人が管理することが多いです。
また、現場のスタッフも現金の紛失や事故には注意していることが多いです。
しかし、固定資産については、購入後は現場スタッフが勝手に移動させてしまう、経理担当者は現場の機械などがわからない、など、現金に比べて管理が不十分な場合があります。
そのため、決算や固定資産税(償却資産税)の申告のための確認の際に、経理担当者と現場で固定資産の認識が異なる、過去に処分したと報告のあった固定資産が残っていた、など行き違いも多々ありました。
今回は、固定資産を現場で確認する際の注意点(相違の原因と対策)について書いています。
現場で固定資産確認が相違する原因
固定資産確認が相違する原因は大きく2つに分かれます。
1.現場は、何が固定資産なのかがわからない
経理をするうえで、固定資産にするものは、主に次のようなものです。
基本的に10万円以上のもの
個人事業や会社が所有しているもの
※稼働休止中のもの、倉庫に放置しているものも固定資産に入ります
固定資産税の対象となる固定資産(償却資産)は、主に次のようなものです。
固定資産税の対象になるもの
- 固定資産として会計処理したもの
- 少額減価償却資産(青色申告で30万円未満で取得したもの)
- 古い資産(減価償却が終わったもの)
- 稼働休止中のもの、倉庫に放置しているもの
- 個別に減価償却することを選択した資産(法人のみ)
- リース契約終了後に自分のものになる資産
固定資産税の対象にならないもの
- 一括償却資産(10万円以上20万円未満で取得して3年で減価償却するもの)
- 一年未満の期間使用するもの
- 10万円未満のもの(個人は強制的に経費扱い。法人は固定資産又は経費を選べる)
- リース契約終了後に返却される資産
会計や税金に関する知識のある人・これらを調べることができる人であれば、わかるかもしれません。
現場担当者や現場責任者の中には、現場のことには詳しくても、これらをわかる人はほとんど見たことがありません。
一方で、経理担当者は、「毎年の行事だし、自分が知っているから相手も知っているはず」という認識のことが多いです。
そのため、固定資産のリストを現場に丸投げして調べてもらった結果、きちんと確認してもらえないということが起こります。
2.現場と経理の間で情報共有がされていない
経理に関する情報は、基本的には現場に開示されず、経営者などの一部の人の秘密であることが多いです。
固定資産の確認の際には、元帳を加工した固定資産リストを経理が現場に丸投げするのですが、金額は伏せられていることが多いです。
これによって、現場での固定資産確認に起こるトラブルがあります。
たとえば、9万円で買った大型シュレッダーや50万円でリース品の機械が固定資産のリストにない、など。
金額やリース等の情報が明示されていれば、わかる人が見れば、固定資産税の対象じゃないからリストにないことはわかるのですが、何もない状況だと、こういったトラブルが毎年のように起こります。
また、経理担当者が会計ソフトに固定資産の情報を登録するときには、請求書の商品名などで登録するため、現場での名称と異なることも多々あります。
そのため、そもそもリストの情報が何を指しているのかわからない、ということもあります。
固定資産が故障し、廃棄処分することもあります。
また、支店間で使わなくなったからお互いに譲り合う、ということもあります。
こういうときに、現場が経理に連絡をしない、連絡の必要性を知らなかった、ということもあります。
現場から、「廃棄したつもりだったけど、倉庫にあった」ということもありました。
去年の決算で廃棄済みで削除していたものを、再度登録修正したことがあります。
このように、情報共有がされないまま、確認作業をすることで、現場担当者も経理担当者で認識のずれが起こったり、作業のストレスになることがあります。
現場確認のための対策は情報共有
結局は、現場担当者と経理担当者の間の情報共有に尽きるかと思います。
上記の原因で書いた、「固定資産とは」という情報と、社内の固定資産に関する情報の2つです。
個別の資産の購入価格を現場に知らせる必要はないとしても、固定資産になるものという判断基準はきちんと現場責任者の方と共有しておいたほうがいいでしょう。
大型シュレッダーは、9万円で買ったから固定資産ではない、と言わなくても、10万円以下だから固定資産ではない処理をしています、ぐらい言って差し支えないでしょう。
また、固定資産の取得があった際には、登録名を現場と経理で共有しておくことや現場のわかりやすい名前にしておく必要があります。
そして、ラベルやバーコード、固定資産の写真(使われている背景や型番なども)など、固定資産の把握と追跡ができるようにしておきます。
購入や移動、修理や廃棄など、固定資産にかかわる出来事があれば、きちんと情報を共有します。
まとめ
固定資産の現場確認で、経理と現場で相違する原因と対策について書きました。
情報を日頃から共有できるようにしておくことが特に重要になります。