月極駐車場のインボイスは、契約書と入金通帳のセット

税金

駐車場貸を行う方のインボイス交付対応については、コインパーキングなどの時間貸駐車場か、月極駐車場で、対応が異なります。

ここでは、インボイス登録をした月極駐車場の貸主の方が、利用者・借主の方へのインボイスの交付について、どういう対応が必要になるかを記載しています。

具体的には、次の2点の作業が必要になります。

  • 契約書と入金通帳のセットをインボイスの要件に合うように修正する
  • 写しは、年末(事業年度末)から7年2か月保存する

とりあえず登録したけれども、実際のインボイスの交付方法がわからない方への参考になるとおもいます。

なお、コインパーキングなどの時間貸し駐車場の場合のインボイス対応は下記記事をご参照ください。

月極駐車場のインボイスは、契約書と入金通帳のセットでいい理由

月極駐車場は、インボイス交付義務があります。

コインパーキングなどの時間貸し駐車場の場合は、利用者が不特定多数のため、宛名などを省略した簡易インボイスの交付が認められています。

しかし、月極駐車場は、契約により相手が特定できるため、原則通りのインボイス交付義務があります。

月極駐車場契約は、最初に契約を結んだあとは、定期的に利用料金の入金があります。

そのため、毎月請求書や領収書を発行することは通常ないでしょう。

インボイスときくと請求書や領収書のようなものを毎月出さないといけないイメージがあるかもしれません。

月極駐車場や不動産賃貸の場合は、請求書や領収書のようなものでなくても、インボイスとして認められる書類がすでにあります。

業務では、契約書に必要事項をすべて記載し、契約書ではわからない実際の利用年月と入金の事実確認を通帳で行っているとおもいます。

そのため、月極駐車場の場合、必要事項を記載した契約書と入金通帳のセットでの保存で1つのインボイスとしての要件を満たすことになります。

実は、インボイスについては、1つの書類だけですべてが記載されている必要がありません。

複数の書類で必要な記載事項が記載されていれば、それら全体でインボイスとしての要件を満たすことができます。

インボイスに必要な記載事項と従来の契約書の比較

月極駐車場の場合、必要事項を記載した契約書と入金通帳のセットでの保存で1つのインボイスとしての要件を満たすことができます。

しかし、従来の契約書と通帳のセットではインボイスの要件を満たすことはできません。

契約書と通帳でインボイスとしての要件を満たすように修正する作業が必要になります。

そのためには、現在の契約書の記載事項とインボイスとして必要な記載事項を比較し、足りないものを追加する作業が必要になります。

インボイスに必要な記載事項と契約書の対応事項は下記のとおりです。

基本的に、登録番号と取引年月日以外は、従来の契約書であれば書かれている事項でしょう。

現在の契約書に対して、必要事項への対応を行えばいいということになります。

上記で新たな対応が必要なのは、「登録番号」「取引年月日」の2点です。
新しい契約者と既存の契約者で対応を分けるのが事務効率が良いとおもいます。

新しい契約者への対応作業

インボイス登録後の新規契約者については、あらかじめ取引年月日以外の事項はすべて契約書のひな形に記載しておきましょう。

具体的には次の2点の対応が必要になります。

  1. 契約書ひな形への「登録番号」の追加

    あらかじめ契約書のひな形に印字しておくと漏れがないでしょう。
    登録番号については、貸主の住所氏名とあわせて署名押印する方法でもいいでしょう。
    万が一、登録番号と取引年月日以外の記載事項がない場合は、ひな形に追加しておきましょう。

  2. 取引年月日の入金通帳の保存

    契約書だけでは、利用と入金事実の確認ができないため、インボイスの要件に足りません。
    そのため、入金の事実と利用年月日を示す資料として通帳もあわせて保存することで、インボイスの要件を満たすことになります。

既存の契約者への対応作業

インボイス登録前からの既存の契約者については、インボイスにあわせて契約書を改めて作成しなおす必要はありません。

現在の契約書に、インボイスとしての条件をみたすための必要事項への対応を行えばいいということになります。

具体的には次の2点の対応が必要になります。

  1. 「登録番号」の通知と保存

    「登録番号」を通知するメールや書面をすべての借主に送付します。
    インボイスが必要な借主がわかる場合は限定して送付してもいいでしょう。
    そして、既存の契約書とセットでこの通知内容も保存しましょう。
  2. 取引年月日の入金通帳保存

    契約書だけでは、利用と入金事実の確認ができないため、インボイスの要件に足りません。
    そのため、入金の事実と利用年月日を示す資料として通帳もあわせて保存することで、インボイスの要件を満たすことになります。


なお、既存の契約者と新しい契約をする場合は、上記の新規契約者と同じ対応になります。

インボイスの保存

消費税法で規定するインボイスの保存期間は、交付した年の年末(法人は事業年度末)から7年2か月です。
たとえば、2023年に交付した請求書は、2031年2月末まで保管が必要です。

月極駐車場や不動産賃貸の場合、その契約が終了した年の年末(法人は事業年度末)から7年2か月保存が必要になります。

契約者の状況にあわせて、次のものを保存しておく必要があります。

  • 新規の契約者(インボイス登録後の契約者)

    取引年月日以外の必要事項が記載された契約書と入金通帳のセットを保存
  • 既存の契約者(インボイス登録前の契約者)

    既存の契約書と登録番号の通知書面の控えと入金通帳のセットを保存

インボイス登録を取り消す場合は、必ず借主に通知する

月極駐車場や不動産賃貸で問題になるのが、貸主がインボイス登録をやめた(登録の取り消し)場合です。

通知は義務ではありませんが、登録取消しの事実と取り消し時期をあわせて、借主に必ず通知しましょう。

不動産賃貸は、毎月請求書や領収書を発行することは通常ありません。
そのため、ほかの業種とちがって、レシートなどで登録状況が借主にわかりません。

借主からすると、知らないうちに登録取り消しになっていたということとなり、トラブルの元になります。

借主が消費税の申告をする際に、原則として、登録されていない貸主に支払った駐車場代の消費税額を控除できなくなるためです。
(借主が簡易課税で申告している場合は関係ありません)

したがって、インボイス登録をやめる際には、消費税を原則課税で申告している借主がいる場合、事前に相談や通知をすることで、トラブルを回避する必要があります。

ちなみに、個人の場合、12月17日までに登録取り消しの届け出をすることで、来年からインボイスの登録をやめることができます。

まとめ

月極駐車場の貸主側によるインボイス交付についてのまとめです。

  • 新規の契約者(インボイス登録後の契約者)

    取引年月日以外の必要事項が記載された契約書と入金通帳のセットを保存
  • 既存の契約者(インボイス登録前の契約者)

    既存の契約書と登録番号の通知書面の控えと入金通帳のセットを保存
  • 保存期間

    その契約終了の年末(法人は事業年度末)から7年2か月
  • インボイス登録を取り消す場合

    借主に取り消すことを通知(消費税原則課税で申告する借主に注意)

とりあえず登録したけれども、実際のインボイスの交付方法がわからない方への参考になるとおもいます。

<参考>

国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
問25(適格簡易請求書の交付ができる事業)
問26(適格請求書の様式)
問27(手書きの領収書)
問53(屋号による記載)
問76(適格請求書等の写しの範囲)
問77(適格請求書の写しの保存期間等)
問93(口座振替・口座振込による家賃の支払)

国税庁 登録制度の見直しと手続の柔軟化に関する概要

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