自分の事業内容をきちんと把握することが、正しい申告への第一歩

税金

確定申告や税務のご相談を受けていると、記帳からすべて税理士に丸投げしたいという要望を受けることがあります。

もちろん税理士としては依頼があるのはうれしいことですが、事業の内容や取引の実態が把握できていなければ、税理士であっても正しく経理や申告を行うことはできません。

正しい申告や適切なアドバイスを受けるためには、まずご自身が自分の事業内容を理解していることがとても重要です。

お金の流れと取引の流れを把握することの重要性

事業を行っていると日々さまざまな取引が発生します。

・どのような商品やサービスを提供しているのか
・誰とどのような条件で取引をしているのか
・売上はいつどのように入金されるのか
・経費は何にいくら使っていて、いつ払うのか

これらはすべて事業におけるお金の流れです。

そしてその取引を裏付けるものが、領収書や請求書、契約書などの証拠資料です。
これらの資料をただ保管するだけでなく、どの取引に対応するものなのかを把握しておくことが、正しい経理処理の土台となります。

たとえば通帳やクレジットカードに入出金の情報が載っていたとしても、

・それが事業に関する入出金であることを裏付ける資料が用意できない
・資料を確認する段階で意外とどこに保管してあるのかわからない
・特にネットからのダウンロード方法がわからない
・契約書の内容や支払いサイクル、その支払いが当月分なのか翌月分の前払いなのかを把握していない

というケースはよくあります。

お金の動きと事業内容が結びついていない状態では、自分でも状況がわからなくなり、結果として申告内容の確認や説明が難しくなってしまいます。

自分の事業は税理士でも最初からわからない

税理士は会計や税務の専門家ですが、お客様の事業を実際に行っているわけではありません。
そのため取引の背景や実態、お金が動いた理由については、ご本人に説明していただく必要があります。

税理士は資料を確認し、内容について質問し、経理として整理することはできますが、事業の実態が見えなければ、専門家であっても判断を誤るリスクがあります。

資料をまとめずに「これを全部お願いします」と丸投げすることは、医者に症状を説明せずに手術を任せるようなものです。

どこが悪いのか、いつからどのような状態なのかがわからなければ、適切な処置ができないのと同じです。

ところが税理士として事業主の方と話してみると、自分の事業やお金の流れ、つまり事業の症状を説明できない人が意外と多いです。

中には税理士がそれを聞き出そうとしても答えない、医師の問診に答えないような残念なケースもあります。

さらに、これは税理士が意地悪をしているわけではなく、税理士側にも無視できない制約があるという点も知っておいてほしいところです。

「決算書はあります」「経理は普段からちゃんとやっています」と言われることもありますが、それだけで税理士が確認を省略できるわけではありません。

たとえ他の税理士が関与していた場合や、ご本人がきちんと経理しているつもりであっても、税理士が関与する以上、原則としてその1年分、場合によっては過去の年度にさかのぼって内容を確認する必要があります。
実際には、思い込みや勘違いによる処理ミスが見つかることも少なくないからです。

また、税理士には申告内容を適切に確認する義務があり、これは税理士法に基づく責任でもあります。
内容を十分に確認しないまま申告を行うことは、税理士自身の資格や信用に関わる問題です。

そのため、年明けになってから資料を一式渡され、「これを全部お願いします」と依頼されても、短期間ですべてを精査することは現実的に難しいのです。

まとめ

当事務所が記帳代行をお受けしていないのも、こうした理由からです。
税理士がすべてを代わりに処理するよりも、税理士のサポートを受けながらご自身で経理を行うことで、自分の事業やお金の流れをきちんと把握していただきたいと考えています。

自分で事業内容を説明できるようになることは、日々の経営判断に役立つだけでなく、税務調査や金融機関からの融資など、対外的な場面でも大きな強みになります。

自分の事業を一番よく知っているのは、他の誰でもなく事業主である自分自身です。
この意識を持つことが、健全な事業運営と正しい税務への第一歩となります。

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