税理士は「代行業者」ではなく「パートナー」

税金

確定申告の時期になると、多くの方と接する機会があります。
その中で、税理士という仕事が「単に資料の数字だけを入力して申告書作る代行業者」として理解されている場面が多々ありました。

申告書を作成すること自体は業務の一つです。
しかし、税理士の役割は単なる代行作業ではありません。

ただ申告書を作るだけなら、今の時代はアプリだけでも可能です。
それでも税理士という専門家が必要とされるのは、「確認」と「判断」と「責任」が伴うからです。

今回は、お客様に対する税理士の関係性と役割についてかいています。

記録と責任について

税務の世界では、事実がすべてです。
いつの取引なのか、何の目的で行われたのか、金額の根拠は何か。
曖昧さが残ったままでは、正しい申告はできません。

実務の現場では、「前に電話でこう言われた気がする」「誰かに大丈夫だと言われた」といった曖昧な記憶が前提になることがあります。
しかし、人の記憶は必ずしも正確ではありません。
悪意がなくても、受け取り方の違いで認識は変わります。

そのため、わたしは基本的に電話を使いません。
よく「電話はないのですか」「電話ではだめですか」と聞かれますが、理由は3つあります。

まず、電話は自分の都合のいい時間に相手の都合がわからずかけるため、実は難易度が高いこと。
次に、わたし一人で対応しているため、電話対応に割ける時間がないこと。
そして最大の理由は、記録が残らないことです。電話では「言った・言わない」のトラブルが発生しやすく、後から確認できません。

そのため、メールやfreee会計やGoogleドライブなど、文章や資料でやり取りすることを徹底しています。
こうすることで、資料やURLを添付でき、お客様は内容をわかりやすく何度でも読み返せます。もし分からない点があれば、再度やり取りして確認することも可能です。
また、資料の送受信や確認日時の記録が残るため、双方が安心してお互いのすべきことに集中できます。
これは疑っているからではなく、お互いを守るための必要な手段です。

税理士は、依頼者の代理として申告書を作成しますが、同時に専門家としての責任も負っています。
後になって問題が生じたとき、「確認していませんでした」では済まされません。
確認を重ねることは、慎重だからではなく、責任があるからです。

また、税理士の申告料金は単なる入力作業料ではありません。
「確認」と「判断」と「責任」に対する料金です。

数字を打ち込むだけならアプリでもある程度できますし、いまは源泉徴収票を撮影したら入力すら必要ありません。
作成以前の段階で、資料や事実関係を確認してどの数字をどう扱うかを精査し、最終的な申告責任を負うのが税理士の役割です。

この責任が料金の本質であることを、理解していただきたいと思います。

一緒に申告を進める関係

税理士は、単に数字を入力する人ではありません。
入力作業そのものは、アプリを使えば誰でもできる時代です。
しかし、その前に必ず必要になるのが、「その数字は税法上どう扱われるのか」という確認です。

・この支出は本当に事業の必要経費と言えるのか
・特例を使う場合、その要件を満たしているのか
・将来、税務調査で説明できる内容になっているか
こうした点は、単なる計算ではなく、事実関係や資料の法律への当てはめです。

税理士は税法という法律を扱う専門職であり、条文や通達に基づいて事実関係を整理し、当てはめを行います。
弁護士のように法律を前面に押し出す感じはありませんが、法律に基づいて判断を行う点では、法律職としての側面を持っています。

また、税理士は国家資格であり、税理士法という法律のもとで業務を行っています。
依頼を受けたからといって、内容を十分に確認せずに申告書を作成することは許されません。

例えば、出された資料だけで何も確認せずに申告する、あるいは証拠資料がないからといってすべて除外して申告する、といった行為は、真正ではない申告書となり、税理士法に抵触する可能性があります。

ときどき、「資料を渡せば、あとは全部税理士にやってもらえる」と考えている方がいます。

「2月になったら資料を取りに来い、あとは任せる」「税理士のいいようにやってくれ、細かいことは聞かないでほしい」「本業に時間を割きたいのに、税理士とのやり取りや資料収集・確認は無駄」といった方もいます。

資料はあくまで材料であり、そこに書かれていない背景や事情、事業との関連性は、ご本人にしか分からないことも多くあります。
同じ1枚の支払の領収証でも業種や事情などによって必要経費になる場合とならない場合があります。

診察室で医者にどこが痛いのか、いつから痛いのかを患者さんが説明するのと同じように、お金や取引の流れ・資料について納税者(お客様)は税理士に説明する必要があります。

税理士が資料や事実関係を確認するのは、申告書を作成するうえで当然のことです。

実際、わたしは「細かいですね」「そこまでしないとダメなのですか」と言われることもあります。
しかしこれは、わたしが特別細かすぎるわけではありません。
税理士はもちろん、弁護士など他の法律職、医師や薬剤師の問診などでも、専門家であれば事実関係や資料を常に細かく確認するのが当然です。
依頼者を守り、正しい申告を作るためには、この細かい確認が不可欠なのです。

申告書は一枚の書類ですが、その裏側には法律の判断があります。
その判断を丁寧に積み重ねることが、結果としてお客様を守ることにつながります。

税理士は「税務の代理人」です。
あくまで代理であり、主体は納税者ご自身です。

本来はご自身で資料を整理し、作成作業を行うことが基本であり、税理士はそれを補助する役割です。

税理士との関係においては、税務判断や申告書の作成といった税務は代理できますが、その基となる資料や事実関係はお客様ご自身に提示していただく必要があります。

そのため、お客様と税理士は役割分担をして一緒に申告を進める関係にあります。
丸投げの姿勢では、きちんと申告することができません。

おわりに

わたしは、誠実に向き合ってくださる方には、できる限りの時間と労力をかけます。
しかし、信頼関係が築けないと判断した場合には、業務をお断りすることもあります。
それは冷たい対応ではなく、双方にとって不幸な結果を避けるための判断です。

税理士は「何でも代わりにやってくれる便利な人」ではありません。
リスクを見つけ、整え、将来の不安を減らすために伴走する専門職です。
その役割は、一方通行では果たせません。
申告は信頼関係のもとで進めるものであることを理解していただければと思います。

タイトルとURLをコピーしました