わたしが過去に勤務していた病院では、「病院機能評価」を受けていました。
これは、病院の運営や患者さまに提供する医療の質などについて、日本病院機能評価機構という外部の専門機関の審査を受けることをいいます。
複数の診療科があり、入院ができる規模の大きな病院であれば、病院機能評価の審査を受けた証明書などを飾っているところもあります。
審査は1度受けて終わり、というものではなく、数年に1度の更新制となっています。
わたしは、更新の審査を受ける準備に関わったことがあります。
今回は、病院機能評価の審査を受ける準備をして感じたことを書いています。
病院機能評価とは
病院機能評価とは、日本医療機能評価機構という公益法人が、専門的・中立的な立場で病院の組織運営や医療の質について評価を行います。
病院が外部機関から審査を受けることといえば、税務調査や保健所や厚生局からの監査のように、何か問題点がないか調べられるというマイナスのイメージが強いかもしれません。
これらと違って、病院機能評価は、一定の水準を満たした内容であれば、質の高い病院として評価機構が認定します、という立場です。
審査を受けることを通して、病院の質を高めることを目的としています。
そのため、あらかじめ審査項目が公開されています。
そして、その審査項目と現状を比較して、問題点の改善などを行うことで、病院の体制を改善することになります。
詳しい概要は、評価機構のサイトをご確認ください。
わたしが準備したこと
「病院機能評価の更新があるから準備して」と、ある日突然、事務長に指示されました。
その事務長は、前回の更新の後に入職した方でした。
(わたしも前回の更新の時には入職していませんでした)
前回の受審までは、長年勤めていた前の事務長が病院業務全般を対応していたようで、ほかに状況のわかる人がいない、管理的な視点で動ける人がいない、という状態でした。
さらに、審査基準がVer5.0から3GVer1.0への大幅アップデートされたため、その対応が必要でした。
病院機能評価は、患者と病院との関わり、診療とケア、病院組織の運営と管理など、病院に関する様々なことを審査されます。
当日の現場立ち合いはもちろんのこと、事前の準備も、治療や薬剤管理などそれぞれの専門職でないとわからないことの方が大半です。
わたしは、この病院で病院機能評価の準備に関わる前は、総務として院内の様々な人と関わっていました。
そこで、病院の総務として把握していた情報を活用し、各評価項目への準備などを、「どの職種の誰にお願いすべきか」の担当割と、評価項目のまとめや前回の資料の提示などの補助を行いました。
受審準備のためのスケジュール管理や各部署への指示、会議進行は事務長が行い、受審当日の審査員対応(聞き取りなど)は、各職種の責任者が行う、など、わたし自身が表立って動くことはありません。
しかし、会議の準備、前回からの評価項目の変更点などのチェック、担当割や事務作業など、他の人から見えない部分の作業の大半を、わたしが行うこととなりました。
やってみた効果
病院を俯瞰的にみることができる
たとえば、「受動喫煙の防止」という評価項目では、「健康増進を図る医療法人の立場として禁煙が徹底されているか」を確認されます。
具体的には、敷地内禁煙の徹底や、患者さまや職員への禁煙の周知状況について、実践している資料(禁煙ポスターや禁煙についての健康講座の開催実績など)を準備します。
実践がなければ、改めて禁煙ポスターを院内各所に貼る、患者さまに配布する、職員の勉強会をする、といった行動を起こす必要があります。
評価の更新の場合、基本的に前回できていたことは、そのままできていることも多いのですが、職員の入れ替わりなどでできていないこともあります。
削除・追加・変更された評価項目もありました。
そのため、前回の資料は参考にしつつも、何もない状態から評価項目を1つ1つすべてチェックしていきました。
現時点でできていることや改善が必要なことを洗い出し、実践できている証拠資料を集約することで、院内業務を客観的に把握することができました。
また、評価項目の半数以上は、当然ですが医療職種の領域になります。
事務職のわたしにはわからないことばかりです。
総務での業務を通して、他の職種の人のことは知っているため「その評価項目の問題に対して、どの職種の誰に依頼すべきか」を的確に割り振ることができました。
(実際の依頼交渉は、わたしではなく責任者である事務長が行いましたが)
さらに事務以外の他の職種の評価項目や準備内容を見ることで、その職種への理解が深くなりました。
病院の長所をみることができる
病院機能評価は、監査のように問題点を責めるのではなく、病院の質を上げるためにいいところを見るための審査です。
現状で不備のある部分については、審査を受ける日までに体制を整え、実践する必要があります。
評価項目だけ見ると、一見すると何もできていないと思えることもありました。
上記の禁煙の例だと、禁煙教育の実践に関する資料がありませんでした。
この病院では、毎月定期的に患者さま向けの健康講座を開催していましたので、一度禁煙をテーマにやってもらうようにしました。
もし、健康講座をやっていない状態で禁煙の健康講座を開くのは難しいです。
しかし、「健康講座を定期開催している」という土台があったから対応できたかなと思います。
健康講座の開催自体も、地域の方や患者さまへの広報という別の評価項目では、きちんと実践できていることの証明になりました。
評価項目について、1つ1つ見ると、実は今も十分にできているのではないか、今の病院のこの部分は当てはまる…と、できていることに目が向くようになります。
このように、普段は意識していないことも、実はできていることだった、など、病院のいいところを見ることができました。
おわりに
ここまで、病院機能評価の審査を受ける準備をした話を書きました。
税理士や会計事務所勤務でこの経験をした人は少ないかなと思います。
医療法人に勤務しても、病院から離れた本部職員では経験できない業務でしょう。
わたしにとっては、病院機能評価の業務は、病院を改めて知るいい機会となりました。