個人確定申告の12月・1月分請求書の注意点

税金

個人事業主の確定申告では、経費の計上時期を間違えることで、所得や税額が変わってしまうことがあります。
特に注意したいのが、12月から1月にかけて請求や支払いが行われる年をまたいだ費用です。

「12月に請求書が来たから今年の経費」「1月に払うものは来年の経費」と、支払日や請求書の日付だけで判断してしまうと、本来計上すべき年を間違えてしまうケースが少なくありません。
確定申告の準備を進める中で、毎年この部分でつまずく方も多いです。

今回は、確定申告を正しく行うために知っておきたい「12月・1月分の請求書」の考え方と注意点について書いています。

「12月分の請求書」でも経費になる月は同じとは限らない

請求と支払いとの関係は、次の3つに分かれます。

翌月分当月払い(前払い)の場合

請求書に「12月分」と書かれていても、その中身は一律ではありません。

まず、店舗の家賃や駐車場代などの不動産関係は、12月に1月分を支払う「翌月分当月払い(前払い)」が多く見られます。
この場合、実際に使用するのは1月なので、経費になるのは来年です。

このとき、12月にそのまま地代家賃として処理してしまうのではなく、前払費用に振り替える処理を行います。

たとえば、12月に、1月分の家賃10万円を支払った場合は、次のように処理します。

(借方)前払費用 100,000     (貸方)普通預金 100,000

すでに地代家賃として処理している場合は、12/31の年末の決算として次の処理を行って12月の経費から外します。

(借方)前払費用 100,000     (貸方)地代家賃 100,000

来年1月になったら、1月分の経費に振り替えます。

(借方)地代家賃 100,000     (貸方)前払費用 100,000

当月分翌月払い(後払い)の場合

水道光熱費や電話代、インターネット代などは、12月利用分が1月に口座振替やカード決済されることが多く、「1月に払うから来年の経費」と思いがちです。
しかし、実際に使ったのは12月なので、12月分として今年の経費になります。
12月31日時点で未払費用を計上します。

たとえば、12月分の電気代8,000円を翌年1月に支払う場合は、12/31の年末の決算として次のように処理します。

(借方)水道光熱費 8,000     (貸方)未払費用  8,000

1月の支払い時には経費にせず、未払費用の精算として処理します。

(借方)未払費用  8,000     (貸方)普通預金  8,000

当月分当月払いの場合

12月分のサービスを12月に受けて、12月に支払う「当月分当月払い」の場合は、12月分として今年の経費になりますので、12月や1月の特殊な処理はありません。

ただし、銀行の年末休業で12月末払いが翌年1月にずれ込むことがあります。
この場合、サービス利用が12月分であれば、当月分翌月払いと同様に、経費計上は12月分として未払費用で処理します。
支払日がずれただけで経費の年度が変わるわけではありません。

確定申告で迷わないために「いつ発生したか」の確認

確定申告では、経費を支払日ベースでまとめてしまうと、12月と1月の境目でズレが生じやすくなります。
税務上の原則は、あくまで「いつ発生したか(発生主義)」で判断することです。
(発生主義については、別記事で解説していますので、そちらも参照ください)

請求書に記載されている「〇月分」という表記は、必ずしも利用期間を正確に示しているとは限りません。
なかには、実際の利用した月ではなく口座振替の月を「〇月分」と書いている請求書もあります。

そのため、確定申告の準備では、請求書だけで判断せず、次の点を確認することが重要です。

不動産関係の場合は、賃貸借契約書を確認します。
「当月分を前月末までに支払う」「翌月分を当月に支払う」といった記載があり、これが経費計上の判断基準になります。

水道光熱費や電話代、インターネット、サブスクなどは、契約書や約款、公式サイトを確認します。
「当月の利用料金を翌月〇日に口座振替やクレジットカード決済」といった形で、利用期間と支払時期が明記されています。

請求書しか手元にない場合でも、締め日や利用期間の記載がないかを確認し、不明な場合は相手に確認することが大切です。

この点、税理士に請求書だけを見せて相談される方が多いのですが、請求書だけではいつの経費になるのか不明のため、必ず契約書や公式サイトの説明などを必ず確認してもらっています。
さらに言うと、今は「契約者以外には教えない」として、一般的な事項ですら税理士の問合せに応じない会社が増えています。そのため、税理士では対応できず、自力で利用と請求の支払いサイクルを確認する必要があります。

特に毎月同じ金額の費用は処理が簡単な分、値上げがあった場合に「いつから値上げなのか」、解約した場合に「いつまで経費になるのか」といった点で、確定申告の際に1か月分ずれていることが後から判明するケースも少なくありません。

おわりに

確定申告に向けた準備では、12月から1月にかけての請求や支払いを丁寧に見直すことが重要です。
経費は、支払った月ではなく、実際に発生した月で計上するのが原則です。

前払いは前払費用、後払いは未払費用として整理し、請求書だけで判断せず、契約内容や利用条件を必ず確認する必要があります。
このひと手間が、確定申告でのミスや後からの修正を防ぐことにつながります。

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