最近、「カスタマーハラスメント(いわゆるカスハラ)」という言葉を見聞きする機会が増えてきました。
実際、政府広報でも、2026年10月以降はすべての事業所においてカスハラ対策が求められる旨が示されています。
政府広報へのリンク:カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介
公共交通機関やスーパー、病院などでも、カスハラ防止のポスターを目にする機会が増え、ガイドライン等を出している業界や会社も増えてきています。
専門職でいうと、医師会や弁護士会、社会保険労務士会などでは方針が示されている一方で、税理士会においては、本記事の作成時点において指針や啓発ポスターなどはありません。
当事務所においては、開業当初から各業務のページに「お役に立てないケース」などでカスハラに近い事例を記載をしていましたが、改めてカスハラについて整理しておく必要性も感じ、「カスタマーハラスメントに関する対応方針」を別途作成しました。
今回は個人事業主でもカスハラに備える必要性についてかいています。
税理士でもカスハラは無関係ではなかった
税理士というと「専門職だから受けることはないでしょ」と思われるかもしれませんが、意外とあります。
また、過去の勤務において、職種関係なくカスハラを受けているケースは見聞きしています。
カスハラというと、強い言葉や極端なケースをイメージされるかもしれません。
実務の現場ではもう少し日常のやり取りの中で現れることが多く、過去の勤務も含めた業務を通じて、次のような経験がありました。
・法令や通達に基づかない、いわゆるグレーな税務判断を強要する
「法律などの建前を聞きたいんじゃないんです。道路標識40km/hのところ、10km/hオーバーぐらいならスピード違反で捕まりませんよ。私としては実際に何km/hまでなら大丈夫か、といったものを教えてくれって言っているんです」と迫られたことがあります。
これは当事務所の「お役に立てないケース」にも載せています。
・証拠資料がないにもかかわらず、経費計上を前提とした処理を強要する
・オンラインでの資料共有が基本の当事務所に対して、確定申告期限直前の時期に「直接資料を取りに来ること」を強要する
・資料精査や内容確認が必要にもかかわらず「資料を出したり質問に答えたりする時間があったら本業でお金稼ぎたいから邪魔するな」「専門職でしょ、あなたのいいようにやって」といった丸投げ・税理士からの依頼拒否
・前任の税理士からの変更依頼の場面で、「前の税理士はもっと安かった」「今までの先生は○○もやってくれた」といった形で、当事務所ではお受けしていない業務の要求や価格の引き下げの要求
一つ一つは珍しい話ではないかもしれませんが、こうしたやり取りが積み重なると、業務の前提そのものが崩れてしまいます。
特に当事務所はわたし1人の個人事務所ですので、こういうことがあると事務所の全業務をストップしてその対応に追われ、結果的に他のお客様にもご迷惑がかかってしまいます。
税理士として守るべき法令や判断基準、そして業務の進め方には一定の線引きが必要であり、それを曖昧にしたまま対応し続けることは、結果的に双方にとって望ましくないと考えています。
個人事業主として考えるカスハラ対策
これまでも当事務所では、お受けできない業務や合わない可能性のあるケースについてホームページで示してきました。
今回、カスハラへの対応も整理し、基本的な方針として明文化したことには、次のようなメリットを感じました。
・事前に方針を示すことで、個別の場面でも対応しやすくなる
・接客関係の個人事業主のお客様に対しても、カスハラ対策の必要性を説明しやすくなる
つまり、されては嫌なことをあらかじめ示すことで、抑止力や対策を講じやすくなるメリットがあります。
一方で、注意点もあります。
カスハラ対策は本来、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」のなかで定められ、パワハラ対策等と同様に従業員の雇用環境を守るための対策として位置づけられています。
つまり、就業に関するルールにかかわる事項であり労務管理の領域になります。
そのため、詳細な制度設計や運用の作成については、社会保険労務士へ相談するように案内しています(税理士が関与すると社労士法違反の可能性があります)。
本記事においてもカスハラ対策については「誰も雇っていない個人事業主であってもこのような対策方針を示すことは、自衛としてもメリットがある。具体的は策定は社労士さんへ」という注意喚起と案内にとどめています。
おわりに
これまでの業務を通じて感じたのは、カスタマーハラスメントは従業員を雇っている事業所だけでなく、1人で事業を営む個人事業主も受ける可能性がある、ということです。
理不尽な要求を強いられる場面は意外と身近にあり、無防備に対応してしまうと業務の進め方や判断の軸が揺らぐだけでなく、時間やメンタル、場合によってはお金まで削がれてしまうことがあります。
そのため、義務ではなくても、あらかじめ自分なりの対応方針や線引きを考えておくことが重要だと感じます。
事前に考えておくことで、無理なく業務を進められるだけでなく、お客様とのやり取りも安心して行うことができます。
